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100年前の反日運動から読み解く「中国の矛盾」と「日本の欠陥」

5/12(日) 12:33配信

Wedge

「眼前の利害」に迷いやすい日本人

 ここで一転して若者は、中国における欧米列強の策動に目を向ける。

 たとえばアヘン戦争の結果に基づき対外開放された上海における「英國の雄圖は實に驚くべきもので盛んに其の勢力の扶殖に從事した」。世界史から見ても「侵略的野心を持つて又成功したものは他にあるまい」といえるイギリスは、中国に対しても同じである。「最近長江貿易上に列國の勢力が入つて競爭が烈しくなるや英國は更に富源開拓の鐵道に投資し」、「長江を中心とする鐵道網の殆どすべてに英國の資本が入つてゐる」。「こんな具合で支那の鐵道と英國とは、最も緊密な關係になつてゐるが、英國の野心はいつも中々根深い」。

 ドイツについては、大冶鉄鉱山における「暗中飛躍」を指摘する。

 清朝末期における近代化を進めた高官の1人である張之洞は長江中流域を管轄する湖広総督在任時、古書から管轄区域内の湖北省大冶県一帯に鉄鉱床ありと睨んだ。そこで「一八九〇年獨逸技師ライノンを聘して、實地踏査をなさしめた」ところ、古書は正しかった。「ライノンは三旬の探査の後、古代製鐵の遺跡を發見し、次いで世界に有名なる本鐵山の發見するに至つた」が、彼は「單なる支那の忠實なる一傭技師に甘んぜんや、我が本國への忠義立ては此時と、張之洞へは知らぬ顔の半兵衛をきめこんで、裏面では早速北京の獨逸公使を通じて本國政府に密電を發し、利權の獲得を慫慂した」。ドイツ政府は直ちに在北京公使に訓令し、一帯の採掘権と鉄道敷設権を「支那政府に要求せしめた」というのだ。

 「當時獨逸のやり方が如何に狡猾であつたかは、大冶に行つたものは、素人でも直ぐ氣付く程」だ。それというのも「殊更鐵路を迂回せしめて、距離を延長し」、なんとかして「機械材料などを少しでも多く買はせやうかとする根膽だつた」からである。

 ここで注目すべきは、大冶鉄鉱山の日本人技師が同地の将来性を見抜いて鉱山開発を進言したにもかかわらず、日本側官民が躊躇逡巡して無為無策に時を過ごしてしまったことだ。かくて若者は、大冶鉄鉱山での日本の失敗をイギリス(上海と長江流域)とドイツ(大冶鉄鉱山)の成功に比較し、将来を見据えることなく「眼前の利害に迷ひ易い日本人の大に學ぶべき事ではあるまいか」と批判した。

 こう見ると「歐米某國の悪辣煽動教唆」という指摘は、「眼前の利害に迷ひ易い日本人」の“逃げ口上”とも思えてくる。

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最終更新:5/12(日) 12:33
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