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美空ひばり、手塚治虫、松田優作、竹下登の金庫番……。平成元年を象徴した6人の最期

5/13(月) 17:12配信

BEST TIMES

■平成を代表するキラーコンテンツ「漫画」の礎を築いた天才

 一方、最期まで仕事への執念を燃やし続けたのが、手塚治虫だ。気力体力ともケタはずれで、同世代の漫画家・加藤芳郎は弔辞において「十人分以上の」仕事をしたと語った。

 しかし、長年の無理がたたってか、昭和63年3月に入院。本人には胃潰瘍と告げられたが、現実は胃ガンだった。手術して仕事を続けたものの、11月、中国でのアニメイベントから帰国してそのまま再入院。元号が替わってほぼ1ヵ月後の2月9日、60歳で亡くなった。

 それでも、病床で新作の着想に励み、日記の最後のページにはこんなメモが記されていた。

「一九八九年一月十五日 今日すばらしいアイデアを思いついた! トイレのピエタというのはどうだろう。癌の宣告を受けた患者が何一つやれないままに死んで行くのはばかげていると、入院先のトイレに天井画を描き出すのだ。(略)」

 やがて、昏睡状態に陥ったが、ナースが手をとり「ああ、この手であんなにたくさんの漫画を描かれたんですねぇ」と言うと、突然目を開け「縁起でもないことをいうな!」と怒ったというエピソードもある。

 ただ、歌謡界の「女王」とマンガの「神様」の退場は、平成の新たな文化の台頭を加速させた。ひばりの遺作『川の流れのように』をプロデュースした秋元康はこれでハクをつけ、アイドルグループ・AKB48などでJポップシーンを席巻していく。また、予算や時間を軽視しがちな手塚アニメに懐疑的だった宮崎駿は、手間ひまかけた長編にこだわることでジブリアニメを世界的なブランドに成長させた。

 思えば、アイドルもアニメも、平成を代表するキラーコンテンツだ。その礎を築いた巨人ふたりが元年に亡くなり、世代交代が進んだことは時代の神秘かもしれない。

■世界一豊かなアメリカでの成功を夢見た大スター

 この年には、松田優作の死もあった。主治医によれば、昭和63年9月の時点で「ガンは膀胱の4分の1ほどを冒して」おり、告知も行なわれた。しかし、松田はオーディションで射止めたハリウッドデビュー作『ブラック・レイン』の撮影中だったため、手術をしないことを選択。妻・松田美由紀にも翌春まで秘密にし、話した際も軽症だと嘘をついたという。

 そして、映画は日米両国でヒットする。が、日本での公開日、ついに緊急入院。主治医によれば「相当進行していて、尿もつまって出ないような状況」だった。そのまま病院の外に出ることなく、1ヶ月後の11月6日、40歳で他界するのである。

 最晩年の松田は、鉄板焼きの海老を見ても失われた命への感謝を吐露する一方で、本格的ハリウッド進出への意欲も保ち続けていた。死の予感を強くしながらも、俺が死ぬはずがない、死んでたまるかという気持ちをそれ以上に持ち合わせていた印象を受ける。その精神性はどこから来ていたのか。ひとつ、着目したいのが彼の出自だ。

 松田は在日韓国人の母と日本人の父のあいだに生まれた私生児で、デビュー時の戸籍名は「金優作」だった。帰化申請しても通らず、高校時代には米国に留学して現地の国籍取得を目指したものの挫折。それが『太陽にほえろ!』で人気俳優となったことで、チャンスが訪れる。

「僕はいまテレビの人気番組に出ているのですが、国籍が違うとわかったら、視聴者の皆さんにガッカリされてしまうでしょう」

 そんな内容の帰化申請動機書を法務大臣に提出し、晴れて日本人・松田優作に。最初の妻である松田美智子は、この出来事を機に「言動に自信を持ち、性格も明るくなった」と、明かしている。ただ、子供時代のことは「ほとんど話さない人でした」とも。そのコンプレックスは根深く、ハングリー精神や承認欲求につながってもいたのだろう。また、国籍上の屈折を抱える者が世界一豊かな米国での成功でそれを一気に超えようとするのもありがちなパターンだ。松田の壮絶な死は、日韓の複雑な歴史にも思いを馳せさせるものだった。

 改元から半月後に、16歳で夭折したアイドルもいる。バイク事故による脳内出血がもとで亡くなった高橋良明だ。ジャニーズ事務所が独占しつつあった男性アイドルシーンにおいて、児童劇団出身ながら、歌をヒットさせ、ドラマ『オヨビでない奴!』に主演するなど活躍していた。

 平成最初の大河ドラマ『春日局』でも、序盤にヒロインの兄役で登場。そのあとは、ドラマ『ツヨシしっかりしなさい』の主演が決まっていた。彼の死により、主役は森且行が務めることになる。SMAPでは初の連ドラ主演で、彼らのCDデビューはその2年後だ。高橋は男性アイドル史の節目に、無邪気な印象を残して散っていった。

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最終更新:5/13(月) 17:12
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