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米国で注目の「伝統的幻覚剤」、最古の証拠発見か、研究

5/14(火) 7:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

気分障害や依存症などへの効能も期待されるアマゾンの「アヤワスカ」、研究

 キツネの鼻の皮を3匹分きちんと縫い合わせた小さなポーチ。そこに残されていたものは、伝統的な幻覚剤「アヤワスカ」が使用されていたことを示す世界最古の考古学的証拠になるかもしれない。アヤワスカとは、南米アマゾン川流域の先住民が植物からつくっていた薬で、強力な幻覚作用をもたらす。

ギャラリー:米国で注目の「伝統的幻覚剤」、最古の証拠発見か 写真8点

 この発見に関する論文は、5月6日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。論文の共著者である米ペンシルべニア州立大学の人類学者ホセ・カプリレス氏によると、見つかったポーチは、現在のボリビア南西部にいた約1000年前のシャーマンの持ち物だった可能性が高いという。

 同氏は2010年、およそ4000年前から断続的に人に使われてきた洞窟遺跡クエバ・デル・チレノを発掘中に、このポーチを発見した。その中から、幻覚作用を誘発する物質が検出された。

 この洞窟はかつて、墓として使われたことがあった。そのため、墓荒らしによって遺体は持ち出されていたが、ビーズや人の髪で編んだ紐、それにカプリレス氏が最初は革靴だと思った物は、ゴミと見なされて盗掘を免れた。

 その「靴」は、実は儀式用の革の袋で、考古学上のお宝だった。その中には、前述のキツネのポーチ、色鮮やかなヘッドバンド、リャマの骨から作られた小さなヘラ、彫刻が施された吸入用のパイプと小さな木皿が入っていた。革袋の表面の放射性炭素による年代測定の結果、西暦900年~1170年頃に使われていたことがわかった。

精神に作用する物質を多数検出

 革袋には、乾燥した植物そのものの残骸が入っていたが、カプリレス氏の国際研究チームは、それが何なのかを同定できなかった。そこで次に、この袋の持ち主であるシャーマンと思しき人物が、その他にどんな植物を革袋に入れていたのかを明らかにするため、キツネの鼻のポーチの内側に残されたものを化学的に分析した。

 その結果、ポーチにはかつて、精神に作用する多くの物質が入っていたことが判明した。分析したところ、ブフォテニン、ベンゾイルエクゴニン(BZE)、コカイン(おそらくコカの葉に含まれていたもの)、ジメチルトリプタミン(DMT)、ハルミン、そしてシロシン(マジックマッシュルームに含まれる成分)と思われる物質が検出された。

 ポーチに入れられていた植物のすべてがボリビア南西部に自生しているわけではない。ポーチの持ち主は長距離を旅していたか、広大な交易網を利用していたと考えられる。ハルミンはヤヘイという植物に豊富に含まれ、何百キロも離れた南米北部の熱帯地域から運ばれてきたという。DMTはアマゾン低地に自生するチャクルーナという植物に由来するかもしれない、と研究チームは考えている。「この人物は、とても長い距離を移動していたか、各地を転々とする人々と繋がりがあったのでしょう」とカプリレス氏は話す。

 このシャーマンは、トランス状態に入るために、ハルミンとDMTを調合して、強力な幻覚を体験していたのではないかと考えられる。ハルミンを含むヤヘイ(Banisteriopsis caapi)は、現代のアヤワスカの主原料であり、DMTを含むチャクルーナ(Psychotria viridis)と併用すると、相互作用により強力な幻覚作用を引き起こすが、吐き気や嘔吐を伴うこともある。

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