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「米中対立」めぐる米高官の人種偏見発言

5/14(火) 12:13配信

Wedge

 これは明らかに、故サミュエル・ハンティントン米ハーバード大学教授が1993年、季刊誌「フォーリン・アフェアーズ」に発表した大論文の中で、東西冷戦後の世界が西洋文明対非西洋文明に収れんされていくことを予言した「文明の衝突」論の延長線上にある指摘であり、スキナー局長も質疑応答の中で、自らが提起した米中対立論がハンティントン博士の主張に沿ったものであることを認めた。

 しかし、ワシントン・エグザミナーでこの発言が報道されると、21世紀の米中関係を人種偏見に満ちた「文明間の衝突」的視点で論じることに対し、間髪を入れず批判や反論が米マスコミで渦巻き始めた。

 まず有力オピニオン雑誌「フォーリン・ポリシー」は5月2日付けのゲスト・コラムで以下のように酷評した。

 「トランプ政権発足以来、ジャーナリストや学者は外交面における“トランプ・ドクトリン”の何たるかについて論じてきたが、今、国務省政策立案局長の口から具体的な考えが吐露された。それは、文化や人種的アイデンティティが超大国間の関係を律するというものであり、たんなる失言とか軽率発言ではなく、現政権の根幹にかかわる姿勢だが、不正確で、欠陥だらけの有害な考えと言うべきである。

 スキナー局長は中国を『非白人大国』と位置付け、西側陣営の価値観とは異質であり、従って両国が協力し合う余地はなく、どちらが世界を支配するかの選択の問題と述べた。実に大胆な発言だが、証拠に基づくものではなく明らかに間違いだ。現政権下では大統領はもちろんのこと、ジョン・ボルトン大統領補佐官はじめ素人集団が外交プロたちを圧倒的に上回り、素人受けしやすい『文明の衝突』論を説こうとしている。新たに明らかにされた“トランプ・ドクトリン”が文明対立的な思考に立つとすれば、それは人類の文明自体を対立に導くことになる」

 ブルンバーグ通信は5月4日の解説記事の中でこう論じた。

 「米中間の競争は今後何十年にもわたって続く重要事であるとのトランプ政権の主張は正しい。だが、文明間の衝突モデルとしてとらえることは、わが国の利益にはならない。なぜならそれは、中国側の術中にはまることになるからだ。

 両国の間には深遠な文化的差異があることは事実だが、将来の世界をスティーブ・バノン前大統領補佐官が喧伝してきたような、西側キリスト教圏対非キリスト教圏の対立として色分けすることは、イデオロギー的にも地政学的にも非生産的である。

 中国はかねてから、アジア諸国はアジアの価値観を共有しており、異質な存在であるアメリカが干渉すべきではなく、アジアの問題はアジアに任せるべきだとの立場をとってきた。しかし、アメリカにとって重要なのは、基本的人権と民主主義の確保であり、人種的、文化的違いを強調することは、ベトナムやインドのような共通の価値観を持ったアジア諸国を敵に回すことになり、極めて危険な思想と言わざるを得ない」

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最終更新:5/14(火) 12:13
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