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久保建英に芸術弾を決められるまで――。耐えたジュビロ、天才に『いい形』与えなかった83分間

5/14(火) 11:37配信

フットボールチャンネル

明治安田生命J1リーグ第11節・FC東京対ジュビロ磐田の一戦が12日に行われ、磐田は0-1と敗れた。粘り強く守りながらも84分に失点。久保建英にゴールを奪われ、大きな注目を集めることになった。悔しい敗戦となったサックスブルーではあるが、ある程度プラン通りに試合を遂行できていたという。(取材・文:青木務)

【動画】久保建英、鮮やかドリブルでゴール演出!相手DFを翻弄する超絶テクを披露

●自由を与えたら仕事をしてくる久保建英に対して

『久保建英、今季リーグ初得点』。FC東京対ジュビロ磐田のゲームを総括するには、これで十分かもしれない。日本の未来を背負う若者が、その特大の才能を凝縮させたようなゴールを決めた日として、多くの人の記憶に残ることだろう。

 ただし、磐田の視点では見え方が少し違うのではないか。結果的に引き立て役に回ったが、決してそれだけではなかった。

「ディエゴ(・オリヴェイラ)もそうですけど永井(謙佑)のスピード、それから背後へのラフなボールに対してのケアというものを優先順位としては一番にしていたので、そこのフリーランニングが続く限りは我慢する時間帯になるんじゃないかと思っていました」

 名波浩監督が振り返ったように、相手のストロングポイントに対して磐田は粘り強く対応していた。「84分にゴールを受けるまでは、我々のプラン通りに進んだ」。この日も誰もが驚愕するスーパーセーブを見せたカミンスキーはこう話し、他の選手も口を揃えた。

 序盤からプレスをかけてFC東京の選手を自由にさせない。久保がボールを持った時も同様で、素早く囲んで行く手を阻む。6分、右サイドで久保が前進しようとする。一度は入れ替わられた山田大記だが、追いすがってファウルで止めた。

 首位を走るFC東京にあって、久保もすでにリーグトップレベルと言えるクオリティを示している。「特別に意識することはなかった」と話したのは、磐田の左ウィングバック・小川大貴だ。久保だから、ではなく、首位チームのケアすべき選手の一人だったということだろう。

 自由を与えたら仕事をしてくる久保、右サイドバックの室屋成に対し、磐田は小川大と山田大記をぶつけている。


●磐田の左サイド、FC東京の右サイド

 14分にオリヴェイラのシュートを導き、16分には永井の快速を生かすなど、久保のスルーパスからスタジアムが沸いた。だが、大井健太郎の復帰もあって最後のところで踏ん張りが利くようになった磐田も崩れない。

 久保はその後、中に寄ったりサイドに張ったりと関与の仕方を調整していたが、磐田はいい形でボールに絡ませない。久保にとってはややいつもと違う感覚があったのかもしれない。少なくとも、磐田は手応えを持って戦えていた。

 後半も磐田の左サイドとFC東京の右サイドは緊張感のある戦いが続く。小川大と山田が久保を囲んで集中力を示せば、久保もスルーパスで室屋を走り込ませるなど違いを生み出そうとした。

 そんな中、FC東京は69分にナ・サンホを投入。韓国代表アタッカーが右サイドに入り、久保は左に移った。試合開始から、長谷川健太監督は「室屋と久保のところをだいぶケアしているんだろうな」と感じており、「なかなか建英がいい形でボールを持つという状況を作れなかったので、一旦景色を変えた方がいいかなと」という理由で、ナ・サンホとのポジションチェンジを促した。

 結局、約7分後に久保は再び右サイドでプレーするのだが、磐田がしっかりと封じることができたと言えるだろう。対面の相手の情報をあまり入れずに臨む小川大に、実際にマッチアップした久保について聞くと、こう答えた。

●83分間、自由を奪えていたが…

「左利きで、本当に左足ばかり使うので、そこは警戒していました。左のコースを切りながらジワリジワリと。持った時に一発というか、スルーパスとか背後への球というのはすごく狙っていた。持ち方ももちろん良かったですしね。未遂に終わるパスもあったりしましたけど、本当にあの失点シーン以外はそんなに、特別怖いなというシーンは作られなかったと思います」

 もっとも、これはあくまで『対久保』の話である。FC東京は、攻め残りするアダイウトンの守備強度がそこまで高くないことを踏まえ、左サイドを起点に攻撃を展開。久保を経由しなくとも、形は作れていた。

 また久保についても、仮にいつもと違う感覚があったとしても息を呑むようなスルーパスを繰り出すなど、自身のリズムは保っていた。何より、一つのチャンスに懸けていたはずで、実際に仕事を果たした。決して簡単ではないボールを、あの態勢でゴール隅に打てるのだから、対戦相手にとって本当に怖い選手だ。

 83分間は久保から自由を奪えていた磐田だが、この時は一瞬だけ縄を解いてしまい、手痛いダメージを負うこととなった。

 首位チームを相手に磐田はある程度、プランを遂行できた。しかし、試合には敗れており、持ち帰れそうだった1ポイントも得られなかった。今のチームにとっては勝ち点を少しでも上積みすることが求められる中で、最良の結末ではなかった。手応えをより具体的なものとしたいサックスブルーは次節、14位・ベガルタ仙台と対戦する。

(取材・文:青木務)

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最終更新:5/14(火) 12:00
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