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キャッシュレス、誰がコストを負担するか~No free lunch、タダで利用できる幸運はない

5/15(水) 11:53配信

政治山

前回のコラムで、日本は、電子マネーが銀行発行のデビットカードを凌駕する唯一の国であることを書いた。
参照「なぜ銀行はキャッシュレスに出遅れたか」
https://seijiyama.jp/article/news/omn20190306.html

たしかに、電子マネーに代表される非銀行系のキャッシュレスは、利用者(消費者)にとって「お得感」が強い。ポイントもクーポンもつく。だが、キャッシュレスをめぐる費用・便益の構造は複雑だ。インプリシットな(暗黙の)負担もある。利用者は、本当にコスト負担なしに便益を享受しているのだろうか。

キャッシュレスにはコストがかかる

キャッシュレスの実現には、おおまかにいって、2つのシステムが必要となる。第1は、利用者と店舗(加盟店)間のインターフェースだ。第2は、利用者の預金口座から店舗の預金口座に資金を振り替える仕組み(決済手段)である。

最近の焦点は、もっぱらインターフェースの革新に当たる。スマホやQRコードなどの技術革新をとりこみ、利便性を高めることで利用者を増やす狙いがある。

だが、簡便な手段とはいえ、新たなインターフェースの構築には費用がかかる。資金を振り替える仕組みへの接続も必要だ。セキュリティの強化も欠かせない。このコストを誰が負担するかは、ビジネスモデルを決める重大な要素となる。

現金削減の最大の恩恵は中央銀行に

現金の削減(キャッシュレス)で、最も恩恵を受けるのは中央銀行だ。中央銀行は、印刷局に支払う銀行券の製造費用や、銀行券の鑑査、流通などの費用を削減できる(注)。

(注)ただし、中央銀行全体の収益への効果は、むしろマイナスとなる可能性がある。中央銀行は、現金(負債)の発行見合いに国債(資産)を保有し、運用益を得ている(運用益から費用を差し引いたものが、いわゆる「シニョリッジ」)。現金残高の削減は、費用を減らすと同時に、運用益を減少させる。

したがって、費用・便益を見合わせる観点からは、中央銀行自身がキャッシュレス手段を提供するのが最も分かりやすい。しかし、これには厄介な問題がある。中央銀行のキャッシュレスは、個人や企業が中央銀行に預金口座を開くのに等しい。すなわち、電子マネーでの代金決済は、日銀内部に開かれた利用者名義・店舗名義の口座間で振り替えるのと同じである。

そうであれば、例えば信用不安が生じるような場合、民間銀行の預金が中央銀行電子マネーに大量にシフトするおそれがある。信用不安の増幅を避けるには、慎重な制度設計が必要になる。現在キャッシュレスの提供が民間に限られるのは、そうした配慮からだろう。

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最終更新:5/15(水) 11:53
政治山

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