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JALが「ツアー商品を売る自販機」を開発 なぜ作ったのか

5/15(水) 6:00配信

日経クロストレンド

 4月21日に東京ミッドタウン日比谷で開かれたJALのイベントに、「体験を売る自動販売機」が初お目見え。実は単なるデジタルサイネージで、液晶パネルの裏側には何も入っていない“ハリボテ”だ。しかしわざわざ自販機型にしたのには、インターネット販売に慣れない層を取り込む仕掛けがあった。

 「JAL体験自販機」で取り扱うのは、JALPAKハワイが扱う現地オプショナルツアー。現在の販路は大きく分けて2つあるという。1つは公式ウェブサイトでの販売で、「タビマエ」つまり旅行に行く前に購入する人が多い。ただJALPAKのハワイ現地オプショナルツアーの数はなんと600種類。膨大なラインアップの中から希望のツアーを選ぶのには、それなりの労力が必要だ。また、動画コンテンツなども用意しているが、パソコンやスマホの画面では魅力が伝わりにくく、きちんとプロモーションできていないという課題があった。

 もう1つは、ハワイのホテル内などに設置している「JALPAKアロハステーション」での販売。スタッフが旅行客の要望を聞きながら提案できる点では優れているが、旅先で時間を無駄にしたくないと考える旅行客はそもそも来店しない。

 事前に調べる人と、現地で決める人に2分化している顧客層を拡大できないか――。そこでJALが着目したのが、日本を出発してから、現地に到着するまでの「旅ナカ」だった。国際線の場合、空港には早めに着いて、ラウンジや搭乗ゲートで出発を待つことが多い。その間にオプショナルツアーをアピールできないかと考えたのだ。

 JALはその課題をオープンイノベーションの拠点である「JAL Innovation Lab」に持ち込んだ。これに対して「自販機」というアイデアを提案したのが、パートナーの1社である日本経済新聞社の研究開発組織「日経イノベーション・ラボ」。「自分たちでは自販機で旅を販売するとはなかなか思いつかない。新しい顧客接点を作れる点に魅力を感じた」(JAL)。

 自販機といっても、中から何かが出てくるわけではない。あるのは前面の液晶パネルだけで、ここ一つひとつのツアーが、ボトルの形状を模して表示されている。興味があるツアーのボトルにタッチすると、画面が遷移して、ツアーの詳細が表示される。この中には動画も掲載されており、タッチすると大画面で再生が可能。気に入ったら、表示されているQRコードを手持ちのスマートフォンで読み取り、スマホからツアーを申し込む仕組みだ。

 実は、ツアーの詳細画面や動画は、ツアーの販売サイトで公開しているものをそのまま自販機に移植。作り変えたのは、ツアーを選択する画面をボトルを選ぶという自販機風のインターフェースにしたところだけだ。

 しかしここが、この自販機の最大の肝。機能としてはパソコンやタブレットで事足りるが、空港に置かれていても、実際に操作してみようと考える人はそう多くはないだろう。「使い慣れた自販機と同様の外観、使用感に近づけることで、操作方法に悩むことなく幅広い層に利用してもらえるはず」(JAL)。見た目でも自販機と認識されるよう、実際の自販機の寸法を測って再現した。“ハリボテ”にも意味があるわけだ。技術的にはそう難しいことではなく、表示するコンテンツも既存のものを流用できたことで、1月にアイデアが提案されてから、わずか3カ月で実機が完成した。

 現状は、約600のオプショナルツアーのうち96種類を、JALが提案する4つのスタイル「Nature Retreat」「Living Traveler」「Travel Wellness」「Flexible Worker」に分けて24種類ずつ表示している。ユーザーが好みのスタイルから選ぶ仕組みだが、「今後は顔認証機能などを載せ、年齢や性別に応じたリコメンドをすることも検討している」(JAL)。2019年いっぱいはイベントに出展して来場客の反応を調査。最終的には空港の搭乗ゲートやラウンジへの設置を目指す。

佐藤 嘉彦

最終更新:5/15(水) 6:00
日経クロストレンド

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