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南阿蘇の秘湯「すずめの湯」:熊本地震から3年ぶりに営業再開

5/16(木) 11:38配信

nippon.com

南阿蘇村にある地獄温泉「青風荘」は、2016年に発生した熊本地震、その後の豪雨による土砂崩れで甚大な被害を受けた。3年後となる19年4月に、“奇跡の温泉”と呼ばれる「すずめの湯」を再開し、入浴客でにぎわっている。

生まれたての温泉を楽しむ人たちで連日活況

今から約200年前、熊本・阿蘇の山あいで発見された秘湯がある。江戸時代は熊本藩の武士のみに入浴が許され、明治以降に一般開放されると庶民の湯治場として栄えた南阿蘇村「地獄温泉」だ。噴出する火山ガスによって、温泉の近くに植物が育たない場所があったため、地獄温泉と名付けられたという。

現在は、明治時代から烏帽子岳の麓にたたずむ一軒宿「青風荘」が残り、全国的に珍しい足元湧出(ゆうしゅつ)の硫黄泉「すずめの湯」があることで知られている。浴槽の底から湧き出る湯は、加温や加水を一切せずに入ることができるために効能が高く、「生まれたての源泉につかれる奇跡の温泉」として多くのファンを持つ。

2016年4月16日に発生した熊本地震で、青風荘は大きな被害を受けた。復旧を目指している最中の2カ月後には、記録的な豪雨によって土石流が発生。施設の大半が損壊し、宿への道路も寸断されていた。宿は休業を余儀なくされていたが、19年4月16日、旅館の全面再開に先駆け、「すずめの湯」が日帰り入浴で復活した。

すずめの湯の露天風呂と内湯は、以前の趣を残しつつリニューアル。さらに、新設の休憩所や、復旧工事中に新しく発見された冷泉を使った露天風呂も登場。新しく生まれ変わった施設で、訪れた人たちは3年ぶりの秘湯を思い思いに楽しんでいる。

湧き出る温泉に励まされ、2020年4月の全面再開を目指す

震災以前と大きく異なるのは、旅館の名前が明治時代から続いた「清風荘」から「青風荘」へと変わったことだ。

熊本地震の本震で多くの建物が被災していたが、2カ月後に発生した記録的な豪雨は、それ以上にすさまじい被害をもたらした。敷地の約7割が土石流に飲み込まれ、道路が寸断されたことで作業にも大きな遅れが出た。復旧計画が進む中で、「清風荘」の「清」の字から水を表す「さんずい」を外し、「青風荘」とすることになったという。災害の記憶を忘れないとともに、新しい宿の歴史をつくっていきたい――。そんな思いが込められているのだ。

大きなダメージを受けた旅館を再興させる原動力となったのが、湯船の底から湧き上がる温泉だったと、副社長の河津謙二さんは3年前を振り返る。

「土石流災害の後、被害を受けた建物を見て途方に暮れたのですが、すずめの湯の温泉だけは変わらず、力強く湧き上がっていました。その時、この温泉が湧いている限り、必ずやり直せる。そう感じたんです」

2019年、すずめの湯は復活を果たし、ゴールデンウィーク10連休には県内外からの入浴客でにぎわった。村道の喜多・垂玉線はまだ復旧工事中で、昼間のみ通行可能となっている。再開と同時期に阿蘇山の噴火による規制が発表されたが、中岳火口までは4キロ以上離れているため、青風荘には全く影響はないそうだ。河津さんによると宿泊施設の全面再開は、震災から4年後の2020年4月を予定しているという。

取材・文・写真=歌岡 泰宏(ポルト)

最終更新:5/16(木) 11:38
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