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7連敗はイニエスタも「答えを知りたい」未知の領域。ビジョンなき神戸はどこに向かうのか?

5/16(木) 11:44配信

フットボールチャンネル

 ヴィッセル神戸が終わりの見えないトンネルに入り込んでしまっている。積極的な補強でアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャら多くのビッグネームを揃えながら、現在は公式戦7連敗中。この悪循環から抜け出す術はあるのだろうか。(取材・文:舩木渉)

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●イニエスタも答えを知らないほどの不振

 どこに問題があって、こんな状況になっているのか。その問いにアンドレス・イニエスタは「あわよくばその答えを知りたい」と答え、ネガティブな感情を吐き出すように大きくため息をついた。ダビド・ビジャとセルジ・サンペールは固く口を閉ざしたまま帰路についた。彼らの振る舞いが、今のチーム状態を象徴している。

 ヴィッセル神戸が迷い込んだ暗く長いトンネルは、未だに出口が見えてこない。14年ぶりのリーグ戦6連敗。これはわずか4勝しか挙げられずにJ2降格を味わった2005年に記録したものだった。当然、サポーターからはブーイングが飛ぶ。試合後にはスタンドに1時間近く残り、三浦淳寛SD(スポーツダイレクター)が直接対応。混迷は深まるばかりだ。

 12日に行われた明治安田生命J1リーグ第11節の鹿島アントラーズ戦。神戸は負傷明けで「ギリギリの状態だった」というイニエスタをベンチに置き、4-2-3-1のシステムで試合に挑んだ。ところが序盤からアウェイチームに主導権を握られる。

 そして失点場面もあっけなかった。17分、鹿島はGKクォン・スンテから楽々攻撃を組み立て、サイドに張り出した左サイドバックの安西幸輝が、内側にポジションを取った白崎凌兵にボールを渡す。ここ最近状態を上げている背番号41は相手のスライディングを冷静に見極め、ゴール前にふわりとしたクロスを供給。最後は巧みな動きでマークを振り切ったセルジーニョが利き足ではない右足に柔らかく当て、ゴールネットを揺らした。

 これが決勝点になるが、鹿島が複数得点していてもおかしくない展開。公式記録に記載された神戸のシュート数は、わずかに「1」。それも前半に古橋亨梧が縦パスを受けて半ば強引に前を向いて単独突破を仕掛けて放ったロングシュートだった。その古橋が43分に負傷交代を強いられたのも、神戸にとっては痛手だった。

 とはいえあまりにも不甲斐ない。「今は本当に精査するのが難しい状態ではあるけれど、やはりサッカーというのは負けだすとどんどん自信を失って、チャレンジする気持ちがなくなっていって、今のようなトンネルの中に行き着いてしまうと思う」とイニエスタは肩を落としたが、世界的強豪のバルセロナでプレーしていた彼にとっても公式戦7連敗は未知の領域だろう。

●見えない「ビジョン」。神戸はどこに向かう?

 神戸は「バルサ化」を掲げて、イニエスタやビジャ、サンペールといった元バルセロナの選手たちを集め、そのスタイルに合致するであろう戦力も補強している。西大伍や山口蛍といった日本代表クラスの実力者もいる。

 この改革にブレが生じているのか。ファンマ・リージョ監督が退任し、吉田孝行監督が再就任して以降のチームからは「ビジョン」が見えてこない。ボールを保持していても「こうやって攻めたい」ということがわかるような形や流れ、意思は感じ取られず、守備も明確な方向性が定まっていないのかどこかちぐはぐだ。

 鹿島の右サイドバックとして戦っていた永木亮太は「1トップのビジャ選手に入った時くらいはやっぱり怖くて、前を向かれたシーンは何回かありましたけど、前にかける人数も少なかったですし、(神戸の攻撃は)そこまで怖くなかったですね」と神戸の印象について語る。

 実際、神戸がシュート1本に終わっていることも考えれば、永木の言葉に説得力は増す。鹿島から見れば、攻められていても脅威に感じる場面は少なく、攻めていてもある程度余裕を持ってゴールを目指せたに違いない。

 西の出場停止によって普段のセンターバックではなく右サイドバックで先発出場した大崎玲央は「単純なボールロストが多くて、自分たちで流れを悪くしてしまっていた」と語る。さらに「守備の面でも戦えている部分と戦えていない部分がある」と続けた。

「カウンターの時の戻り1つにしてもそうだし、相手との1対1もそうだし、球際のところもそうだし、そういう1つひとつのところで相手にどれだけ多く勝てるかというところが大事になってくるんじゃないかなと思います」

 大崎の感じた「戦えていない部分」は、失点場面にも象徴されていた。GKからのビルドアップに前線から全くプレッシャーがかからず、アシストになるクロスを上げた白崎にも寄せが遅れてスライディングしなければならず、簡単に剥がされてしまった。

●「他のことは考えず、まず目の前の試合に勝つ」(大崎)

 神戸の左サイドバックを務めた三原雅俊は「攻撃のところだとやっぱりミスが多かったですし、守備のところは連動して前からいけずに間が空いて間延びしてしまったと思うし、何かこれというのはないですけど、いろいろなものが積み重なっている」と深刻な表情で、解決が簡単ではない現状を分析する。

 元々の狙いとして「本当は前から行きたかった」と三原は明かすが、「行けずに中盤でうまく動かされた」とも語る。簡単にゴール前まで迫られてしまう守備のまずさは攻撃にも影響している。三原は「ビルドアップのところで相手の中盤を外すところまではいけていても、その後の精度だったり、アイディアだったり、チャンスにつなげるところまでいけていないので、全然怖い攻撃ではない」と自覚している。

 最終ラインからのパス配球能力に魅力のあるセンターバックとして評価されてきた大崎は「1人がボールを持ったら2つ、3つ、ボールを持っている人に選択肢を与えられるくらいサポートしていかないといけないと思うし、そういうのが今日は少なかった」と言う。

「ボールを失った人だけのせいではないと思うし、別にミスしたとしてもその人だけのせいじゃないし、チームみんなでそのミスや課題について考えていかないと、攻撃もそうだし、攻撃陣だけのせいじゃないし、守備も守備陣だけのせいじゃないし。みんなで考えていければいい」

 どこかでミスを恐れているのか。本来はボールポゼッションの時間を伸ばして主導権を握りたいはずの神戸だが、選手たちはボールを奪ってもパスコースを作って関わったり、周囲と連係しったりといった動きに乏しい。守備がハマらないと、いい攻撃につながらず、簡単にボールを失って、また守備の時間で弱みを晒してしまう。この悪循環から何としてでも抜け出さなければ、連敗地獄からの脱却も見えてこない。

「本当にポジティブに考えるしかないというか。もちろんあれだけの雰囲気を作ってくれたサポーターにも申し訳ない。試合前もそうだし、試合中もそうだし、試合後もそうだし……あのブーイングが全てだったんじゃないかと思う。自分たちはそれを受け止めなきゃいけない。とにかくまずは1勝して、他のことは考えずに、まず目の前の試合に絶対勝つということ。1試合勝って、そこからまた次のことは考えていければいいと思います」

●イニエスタは説く「ずっと泣いているわけにいかない」

 大崎は自分たちの不甲斐なさを恥じながらも、なんとか前を向いて勝利を取り戻すべく頭を切り替えようとしていた。イニエスタも、とにかく向上することを信じて真摯に取り組み続けることの重要性を説く。

「ポジショニングがうまくいっていなかったり、1対1がうまくいかなかったり、いいパスが出なかったり、そういうことが重なっていくと、どうしても戦うのが難しくなっていく。もう本当に今はやり続けるしかないというか、チームが1つになって、もちろんこういった状況に慣れていなかったり、このプレッシャーに慣れていなかったりする選手もいるかもしれない。

けれども、やはりチームが一丸となって、この流れを変えるために働き続けるしかない。それしかないと思っている。ここでいい結果が出れば、そこからチームはきっと前に進めると思うので、もちろん今は難しい状況だけれども、続けていくしかないと思う」

 神戸は15日に普段は非公開の練習をファン・サポーター向けに公開した。直前に場所をノエビアスタジアム神戸から、いぶきの森の練習グラウンドに変更もしている。できる限りファン・サポーターと近い距離でチームとしての一体感を醸成できるようにという配慮があっての決断だろう。

 バルセロナで苦境を何度も乗り越え、頂点に立ってきた経験を持つキャプテンは持てる力の全てを注いで、何としてでもチームに勝利をもたらそうと必死に前を向く。次節は18日の横浜F・マリノス戦。アウェイで破壊力抜群の攻撃を武器とするチームが相手だが、そこで連敗を止められば神戸を取り巻く状況は少しずつ変わってくるかもしれない。捲土重来の旗頭となるべきは、やはりイニエスタだ。

「もし来週のマリノス戦に勝ったら、状況がガラッと変わるかもしれない。負けても続けていくしかない。人生においてもずっと勝っている時は全てが素晴らしく、七色に見えるけれど、こういう難しい時に結局できることは、ずっと泣いているわけにもいかないので、続けていくしかないのかなと思う」

 まずは攻守においてチームとしてやるべきことを整理し、全員が同じ意識を持って勝利へのイメージを描けるか。意思統一とビジョンの共有こそが神戸が上昇気流に乗るための鍵になる。

(取材・文:舩木渉)

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最終更新:5/16(木) 11:49
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