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柴田理恵60歳、“おばさん”の記号をあえて笑顔で背負う理由

5/16(木) 11:00配信

文春オンライン

「飲み屋で決めた」に辞めてやろう

 自分たちの演劇をやりたい。そう思い始めた柴田に、もうひとつの事件が起きる。

「東京ヴォードヴィルショーの公演で、客演に松金よね子さんと岡本麗さんと田岡美代子さんの3人を呼んだんです。どうして? と。私たちが若手公演をやっているのは、B作さん、あなたに認められたいからですよって。なのになぜ、外から3人も。私たちの目標になる女優を一人呼んでくるならわかる。でも、なんで3人もって尋ねたら『飲み屋で決めた』って言われたの」

「飲み屋で決めた」は柴田家の女を奮い立たせるマジックワードだ。教師だった柴田の母は、職員会議で決められるべき数々の議題が、会議のあと「男だけ」で訪れる飲み屋で決められることが許せなかった。からくりを知った母は、飲み屋にも麻雀にも徹底的に付き合うようになる。

 柴田の母は、自分が被害者の立場に留まることを絶対に許さなかった。自分を認めさせる労力を惜しまない、意地と根性を持ち合わせたパワフルな女性だ。

 大変だったのは、夜中に帰ってきた酔っ払いの母を介抱する柴田。母は父と外で飲んで帰ってくることも多く、子ども時代は帰宅した両親の布団を敷くのが日課だったらしい。

 柴田自身にも、母の負けん気の強さを引き継いでいる自覚がある。当然、劇団上層部の「飲み屋で決めた」発言に反発を感じた。

「それはないんじゃないかと。私たちだって一生懸命やってんのに、そういうことすんのかよって、ちょっと思ったんですよ。だったら私は違う可能性に賭けたい。それでB作さんに辞めたい旨を伝えたら『じゃあ今度はいい役やるから』って言われたの。それが嫌だった。そういう話をしてるんじゃないんですって言って」

 当時の柴田を思うと、胸が潰れそうになる。いい役は、認められて勝ち取るものだ。なにかと引き換えに授けられるものではない。どんなに悔しかったことだろう。

「そのときにB作さんが言ったんですよ、『劇団は作った者のもの』って」

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最終更新:5/16(木) 13:57
文春オンライン

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