ここから本文です

朝日新聞編集委員が辿る“裏昭和史”【香山リカ氏書評】

5/17(金) 16:00配信

NEWS ポストセブン

【書評】『裏昭和史探検 風俗、未確認生物、UFO…』/小泉信一・著/朝日新聞出版/1300円+税
【評者】香山リカ(精神科医)

 ストリップ劇場、ロマンポルノ、ビニール本、のぞき部屋に愛人バンク。昭和生まれの男性ならどこかで目にしたり、あるいはそっと触れたこともある性風俗文化の数々も、いまはすっかり消えてしまった。

 いや、性に対する興味がなくなったわけでは決してないとは思うが、いまはネットをのぞけば無料でリアルな動画が見られたり、出会い系アプリで恋愛相手が見つかったりする時代なのだ。また一方で世の中の規範意識も変わり、セクハラや性の搾取につながりやすい性風俗産業は急激に消えつつある。

 それが時代の流れなのだと言えばそれまでだが、「いやちょっと待って。往時をなつかしむくらいはいいだろう」というオジサンたちも今や少数派ながら生息している。本書の著者もそのひとり。しかも、朝日新聞大衆文化担当編集委員という肩書で、仕事として消えゆく昭和の大衆史を追っているというのだから驚きだ。

 私自身は女性だが、ケレン味たっぷりのテキ屋やエロスと笑いが入り混じるピンク看板の写真などどれも興味深くながめた。そして、おおっぴらには性が抑圧されているからこそ、それを求めようとする人と商売にしようとする人との飽くなき欲望に圧倒された。

 ただ、そのあとの感じ方には若干の男女差があるようだ。文末、著者と末井昭氏の対談でふたりは「(対象となる女性に)無理やりというのはまったくなかった」「たぶん昭和のエロは愛があった」と意気投合しているが、それには「ホントかな?」と疑問を持つ。夜の風俗で働く女性たちの中には、高いプロ意識を持ちながらも暴力や蔑視で泣いた人もいるだろう。

 いやいや、こういう読み方をすることじたい野暮であり、ここはただこのアヤシくも人間くさいこのウラ文化にあたたかい視線を送ればよいのかもしれない。そして世の女性たちには、夫が本書を買って家に持ち帰っても決して怒らないであげてほしい、ともお願いしたいのである。

※週刊ポスト2019年5月17・24日号

『裏昭和史探検』風俗、未確認生物、UFO・・・

最終更新:5/17(金) 16:00
NEWS ポストセブン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ