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人生がときめかないごみ屋敷に暮らす人々

5/17(金) 14:53配信

nippon.com

平成の30年間、安い物がもてはやされ、私たちは安価な物を買って使い捨てることに慣れきってしまった。そこそこ高収入なのに、持っているのは安物ばかりという人も多い。そうした生活スタイルが「ごみ屋敷」を生む一因となっているのではないか。東京都内を中心にごみ屋敷の片付けを年間850件ほど請け負う株式会社「まごのて」の佐々木久史社長に話を聞いた。

「こんまり」ブーム、断捨離ブームに続き、究極的にモノを持たないことに喜びを感じるミニマリストと呼ばれる人たちが現れているという。整理整頓好きな人がいる一方で、捨てられず、「モノに埋もれて」というよりも、ごみの中で暮らしている人がいるのも、また、日本の現実だ。

食べ残しやカップラーメンの容器を洗わずに何年も放置し、飲みかけのペットボトルや缶飲料が山のように積み上がる。トイレのドアが開けられないほどにごみがたまり、ペットボトルに用を足すような暮らしをしている人もいる。私が経営する会社「まごのて」は、そんなごみ屋敷の片付けを専門とし、年間850件ほど請け負っている。

「死ぬつもりだった」の一言で専門業者になる決意

ごみ屋敷専門の清掃会社となったのは、ある依頼者との出会いがきっかけだった。

大阪で経営していた運送会社が倒産して、2008年、逃げるように東京に出てきた。とにかく日銭を稼ぎたくて始めたのが便利屋。「世の中の役に立ちたい」とか「困っている人を助けたい」とかいう高尚な理念などなく、依頼が来れば何でも引き受けた。

ある時、都内の有名大学の女子学生から部屋の清掃の依頼があった。見積もりのために部屋を見に行って、思わず後ずさりした。小さな学生アパートのドアを開けると、1メートル以上の高さまでたまったごみが玄関から部屋の奥までを埋めつくしていた。電気もガスも使えず、小バエが飛びかい、異臭の漂う部屋で懐中電灯を頼りに暮らしていた。それまでも、不用品の処分や部屋の片付けなどの依頼は受けていたが、初めて遭遇した正真正銘のごみ屋敷だった。

親からの仕送りで暮らす学生なので、手持ちの金はわずか数万円しかなかった。こちらも、開業から1年足らずの時期だったので、人助けなどしている余裕はなかった。それでも、20歳そこそこの女の子が、ごみに埋もれて暮らしていることを考えると、むげに断ることができなかった。代金の不足分は後から分割で支払ってもらうことにした。当時はごみ屋敷清掃のノウハウもなければ、従業員もおらず、妻と息子と家族3人でとにかくやるだけはやろうと、必死になって片付けた。

「何社からも断られて、今度断られたら最後、もう死ぬしかないと思っていました」――お礼のメールに書かれていた言葉を見て、引き受けて良かったんだと、ようやく思えた。それで、「徹底的にこの仕事を極めようじゃないか、他のことを一切やめて専門でやろう」と腹が決まったのだ。

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最終更新:5/21(火) 18:30
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