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人生がときめかないごみ屋敷に暮らす人々

5/17(金) 14:53配信

nippon.com

古い物を捨てられない高齢者

誰にでも、最低限は取り繕いたいという意識が働くから、友だちが家に遊びに来たり、彼氏が泊まっていったりする人は、致命的な状態にはならない。人とのコミュニケーションが苦手で、誰も家に訪ねてこないからどうでもいいやと投げやりになっている人が一定程度いる。

その一方で、高学歴、高給取りで、しかるべき社会的地位の人からの依頼も少なからずある。職業で多いのが看護師。それも、ほとんどが、大病院の救急外来やICU(集中治療室)など生死に関わる現場にいる人たち。外ではバリバリ働いて、コミュニケーション能力もある人が、仕事を離れるとごみに埋もれて暮らしている。ただの怠け者と言うには、度が過ぎている。もしかしたら、無意識のうちに極度の緊張状態とのバランスを取っているのかもしれないと思う。

ある時、本人がハタと気付いて、自ら片付けの依頼の電話をしてくる。ヒアリングしてみると、きっかけになった出来事は覚えていても、ごみがたまっていく過程のことをほとんど覚えていないという人が多い。ごみの崖をよじ登って天井の方が近いぐらいのところを歩いて、ごみの上で寝ているのだから、正気の沙汰ではない。

物の無い時代を生き抜いてきた70歳以上の人には、捨てることはこの上ない苦痛のようだ。昭和の時代に使っていた布団や着古した洋服、時代遅れになった食器を「いつか使うかも」と取っておくうちに物があふれて収拾がつかなくなるケースが多い。

経験上、それらのものを二度と使わないことは分かっているが、衛生状態が保たれていて、生活の動線が確保できるのであれば、高齢者には捨てることを強いなくてもいいと思っている。言い方は悪いが、死んでから片付ければ済むこと。実は、これも依頼者から学んだことだ。

40歳代の大学の女性准教授で、一人暮らしをしていたが、年老いた両親と同居するために広いマンションに引っ越すことになった。両親はかつて古本屋を経営していて、2人とも大の本好き。店をたたんだ後も、本を保管するためのアパートを借りていた。

依頼者は、両親と一緒に膨大な本を引き取る覚悟を決め、新たに借りた3LDKのマンションの2部屋をつぶして本の倉庫にしてしまった。「次々と死んでいく友だちを見送り、身体の自由が利かなくなり、記憶も思い出も失くしていく。毎日たくさんのものを失っている人たちに、これ以上、大事なものを失くさせることはできない」と言っていた。

清掃業者として、片付ける技術があっても、単に物を捨てればいいわけではないということに気付かされた。

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最終更新:5/21(火) 18:30
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