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人生がときめかないごみ屋敷に暮らす人々

5/17(金) 14:53配信

nippon.com

都会の孤独が招くごみ屋敷

首都圏は圧倒的に集合住宅が多いので、片付けの依頼を受けるごみ屋敷もマンションやアパートが中心。壁一枚、天井一枚はさんで隣人がいるのに、とことんまで気付かれない。隣に住む人の名前も知らなければ、出入りがあるかも分からないこともざらだ。

強烈な臭いに耐えられなくなってマンションの管理会社に連絡しても、法律の壁があってすぐに踏み込めるわけでもない。対応策を検討しているうちに、さらに時間が経過し、どんどん手遅れになっていく。われわれが依頼を受けて、大量の荷物を運び出していても、同じマンションの住民は素知らぬ顔だ。たくさんの人が行き交っているのに、まるで、無人島にいるような気分になる。

一昔前は「ごみをちゃんと出しなさい」とか「この部屋、ヘンな臭いがするけどどうなっているの」と勝手にドアを開けるおせっかいなおばちゃんがいたものだ。最近はトラブルを避けるために、他人に関わらないことがよしとされている。そういう人と人とのつながりがなくなってしまったことがごみ屋敷を生む背景の一つになっているかもしれない。

傘は1万5000円以上のものを買いなさい

もう一つは、平成の30年間、日本はずっとデフレで、安い物がもてはやされてきたということ。100円ショップやファストファッションに、価格を競うネット通販が乱立して、私たちは安価なものを買って使い捨てることに慣れきってしまった。そこそこ高収入なのに、持っているものは安物ばかりという人も多い。

数年前、ある依頼者宅で、300円のビニール傘が山のように出てきた。見るからに安物のネクタイ数百本に偽ブランドの時計もたくさんあった。私が依頼者に言ったのは、「傘は最低1万5000円、スーツは5万円以上、時計は最高級ブランド。勇気を持って、買い替えなさい」ということ。

300円だから居酒屋の傘立てに忘れてくるし、気安くコンビニで買ってしまう。1万5000円の傘を持ったらビニール傘を使う気にはならないし、外出先で忘れないように気を付ける。100万円の腕時計は、帰宅後に外してそのへんにポンと放り投げて所在不明になることはないし、一生もののつもりでメンテナンスして大切に使うはず。

その依頼者は1年ほどかけて持ち物を少しずつ入れ替えて、生き方も考え方も変わっていった。さらに、いい仕事に就いて、給料も上がった。

時々、コンビニと100円ショップとネット通販がなかったら、ごみ屋敷清掃などという仕事は成り立たないだろうなと思う。安物を買って使い捨てにしていると、自分という人間までもが安物になってしまう。

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最終更新:5/21(火) 18:30
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