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イヌはオオカミから進化した最強のパートナー

5/17(金) 18:29配信

ニューズウィーク日本版

<狩る側と狩られる側の関係から最強の絆で結ばれた「最良の友」へ――人間と犬の3万年の進化に遺伝学で迫る>

「人間は犬のおかげで生き延びてきた。犬は人間のおかげで生き延びてきた」

人類遺伝学の先駆者でベストセラーの著者でもある英オックスフォード大学のブライアン・サイクス教授はそう書いている。人間と犬、そして両者の歴史について豊富な知識を持つサイクスは、新著『ワンス・ア・ウルフ』でDNAと化石記録を掘り下げて犬の系図を解き明かした。

サイクスにとって、これは「どう猛な肉食動物が飼いならされるまで」というありがちな話ではない。「飼いならす側の話でもある。犬と同じく攻撃的な肉食動物の人類が、盟友になりそうもない相手とどうしてこれほど特別な関係を築いたのか」

犬との関係のおかげで、現生人類の祖先は他の人類を征服し、最終的には地球全体を征服した。人間と(犬の祖先である)オオカミが協力するようになった経緯について、直接の科学的証拠は乏しいとサイクスは言うが、「ネアンデルタール人が滅びて現生人類が生き残ったのは、(両者の移行期とされる)後期旧石器時代に重要な何かが起きたからに違いない」

人間と犬の共進化について、作家のマイケル・マーシェルがサイクスに話を聞いた。

***

――人間と犬はチームを組んでどのくらいか。

3万年かそれ以上だろう。

――犬と人間の絆は遺伝学を超える。

犬と人間との不思議な絆がこのテーマ全体を非常に興味深いものにしている。そのメカニズムの一部は科学的に証明されつつあるが、実質的な不思議さが損なわれるわけではない。

オオカミの群れと人間の集団の社会組織は驚くほど似ていた。どちらもハンターで状況を敏感に読み取ったが、オオカミのほうがはるかに敏感だった。飼い主はよく、自分の考え(そろそろ散歩の時間だ、など)が愛犬には分かると言う。これも狩る側と狩られる側だった頃の関係の遺産だ。オオカミにとってはわずかな振る舞いを手掛かりに獲物の群れから最も弱い者を選べることが重要だから。

――DNA研究の進展によって犬の祖先について明らかになったことで最も意外だったのは?

いろいろある。まず、遺伝的には犬は全てオオカミだけから進化してきたこと。次に、犬の大きさと外見の多様さはほんのわずかな遺伝子の変化でもたらされた可能性があること。そして社交性という人間の遺伝的形質は犬には反映されているが、オオカミには反映されておらず、「人懐っこさ」が犬の意図的な選択によっても進化してきた可能性だ。

<飼い主にはショックかもしれない......>

――遺伝学的には「純粋」な犬種など存在しないというのは飼い主にはショックかもしれない。

いわゆる純血種は遺伝学的に全く同じだとよく誤解されている。だが実際は全ての種はそれ以前の種のミックス(交配種)で、以前の種自体が野生のオオカミの血を引いている。例えば同じ犬種なら外見は同じはずだが、いまだに個体差がかなり大きいのはそのためだ。

――意外にも犬好きではないそうだが、本書執筆中に変化は?

犬好きではないおかげで公平な見方ができた。だが調査と執筆の過程で、犬の多くの性質を称賛するようになった。飼い主に驚くほど忠実なところや飼い主との絆の強さなどだ。

<本誌2019年5月21日号掲載>

マイケル・マーシェル

最終更新:5/17(金) 18:29
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