ここから本文です

時代を変えた平成アニメ「社会現象的ベスト5」で令和の潮流を探る

5/17(金) 13:09配信

FRIDAY

「きっかけはいつもサプライズ」平成のベストアニメーション〔社会現象的ベスト5〕アニメ・ジャーナリスト数土直志が厳選!

30年あまり続いた平成が終り、令和の時代に突入した。平成はカルチャーもテクノロジーも激しく移り変わり、アニメにとっても激動の時代だった。

【画面写真はコチラ】時代を変えた平成アニメ「社会現象的ベスト5」

スタジオジブリの映画、『名探偵コナン』、『ドラゴンボール』、『エヴァンゲリオン』、『ラブライブ!』……。キッズ向けから大人向けまで数え切れないヒット作が次々に生まれた。VHSやレーザーディスクでのOVA(オリジナルビデオアニメ)が全盛を迎え、その後DVDが誕生、深夜アニメが一世風靡する。アニメづくりではセル画の手塗りからデジタルペインティングに移り、CGアニメはもはや日常だ。

そして世界だ。日本アニメは海外で大人気となり、平成の終りには日本で放送されたテレビアニメはその日のうちに翻訳されて世界中に配信される。
アニメが一般に受け入れられるようになったのも大きな変化だ。平成の初めには少しばかり差別的なニュアンスもあった「オタク」の言葉も、ごく日常的に使われる。

日本のアニメには100年を超える歴史がある。これまでに生まれた作品タイトルは、12,000作以上。実はその半数以上が平成の30年間に作られている。
その数え切れない作品の中から、少しばかり筆者の思いも含めて、平成アニメに欠かせない20作品をピックアップしてみた。セレクトの基準は「アニメーションの歴史に大きな影響を与えたエポックメイキング(画期的)な作品」という歴史的な視点で、単なる「傑作」や「名作」とは少し異なる。テーマを「社会現象編」「ビジネスモデル編」「監督編」「技術編」に分け、4回にわたりお届けしたい。今回は「社会現象的ベスト5」をお送りする。

◆『美少女戦士セーラームーン』 (平成4年)
平成アニメのはじまりに何を置くべきか。迷うところだし、議論もあるだろう。ただ平成元年、2年の作品を眺めると、「これぞ時代の変わり目!」が見当たらない。アニメカルチャーという点では、平成のはじまりはやや停滞気味だった。
停滞を打ち破ったのが平成4年にスタートした『美少女戦士セーラームーン』だ。土曜日のゴールデンタイムで放送された本作は、もともとは女児向けだ。しかし戦う少女のキャラクターに、友情、恋愛も絡めたストーリーは、ヤングアダルトの男女の心を捉えた。番組は予想を超える広い世代から支持され、一大ブームを巻き起こしていく。シリーズは平成9年まで5年間5作品200話以上にも及んだ。『美少女戦士セーラームーン』は、やがてくる平成時代のアニメファンパワーを予兆させる作品だったのだ。

◆『新世紀エヴァンゲリオン』(平成7年)
ヤングアダルト向けのアニメに勢いが欠けた平成はじめ、彗星のごとく現れた『新世紀エヴァンゲリオン』があっという間に時代を書き換えた。謎が謎を呼ぶ展開、生物のようなメカデザイン、無表情のヒロイン・綾波レイ。これまでのヒットアニメとは大きく様相を変えた異色作である。むしろそれが新しい時代に求められていた。

エヴァンゲリオンはアニメファンの心に刺さると同時に、より幅広い若者に共感を生んだ。ブームの背景や作品の解読は新聞や一般雑誌でも大きく取り上げられる。むしろ本作をきっかけに、アニメに興味を持った人も多いはずだ。社会を巻き込んだ点では、昭和の『機動戦士ガンダム』以来かもしれない。ガンダムと共通するのは、予想を超えたムーブメント、口コミでの人気だ。エヴァンゲリオンの爆発は、ヤングアダルト向けのアニメに再び目が向くきっかけにもなった。
90年代のエヴァンゲリオンブームは一旦は沈静化する。しかし平成19年に作品を大胆を再構成する「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの始まり、新たなブームが巻き起こる。長い平成を広くカバーしアニメ史全体でも、欠かすことの出来ない作品である。

◆『千と千尋の神隠し』(平成13年)
平成を彩ったアニメブランド、スタジオジブリは避けて通れない。スタジオ設立第1作こそ昭和61年の『天空の城ラピュタ』だが、平成元年には長編映画第4作目『魔女の宅急便』が公開される。スタジオジブリが国内制作した長編は全部で20本あるが、平成26年の『思い出のマーニー』まで実に17作品が平成に誕生した。
スタジオジブリは平成を通じて、その評価と人気をどんどん高めていく。日本どころか世界を代表するアニメスタジオに育っていく。昭和からは想像もつかないほどアニメが社会に受け入れられるようになったのには、スタジオジブリが果たした役割も大きい。

傑作ばかりのスタジオジブリ作品のなかでも、『千と千尋の神隠し』は特別な存在だ。世界最高峰とされるベルリン国際映画祭のグランプリにあたる金熊賞、米国アカデミー長編アニメーション最優秀賞を受賞。世界のなかの日本アニメ、スタジオジブリを築いた。さらに世界の映画界において、アニメーション映画の価値を認めさせたことも意味が大きい。
国内では308億円と前人未到の劇場興収を実現する。映画の高い評価とビジネスの成功が、アニメがビッグマネーになると認識させた点でも重要な作品だ。

◆『時をかける少女』(平成18年)
誰もが負け戦と思ったのが、満塁ホームランで華麗な大逆転を巻き起こす。そんな爽快感を呼び起こした作品が、細田守監督の『時をかける少女』だ。
実際のところ筒井康隆のジュブナイル小説『時をかける少女』をアニメ化するとの話があった時は不安の声ばかりだった。これまでにたびたび映像化されてるだけに、「また?」「しかもアニメで?」との反応。そもそも昭和58年(1983年)に原田知世が主演した大林宣彦監督の大傑作があるなかで、「それを超えられるのか?」といった意見もあった。

ところが細田監督は、原作のストーリーを別の物語に押し込むことで、新たな時代の爽やかな青春ストーリーを創り出す。これが共感を得た。口コミ、それは当時いよいよ大きな影響力を発揮し始めたネットを通して加速的に広がった。
公開日の劇場数はわずか7館。それが延べ100館以上、ロングランと、予想を超えた快進撃になる。この作品は自分たちのものと、あの時代、作品を観た多くのファンが共有した高揚を言葉にするのは難しい。その圧倒的な評価は、やがて細田守を日本を代表する監督に押し上げていく。

◆『涼宮ハルヒの憂鬱』(平成18年)
『時をかける少女』が異例の拡大上映を続けるなかで、もうひとつの大きなムーブメントがインターネット上で起こっていた。同年4月からテレビ放送を開始した『涼宮ハルヒの憂鬱』である。東京の地上波キー局を使わず、地方局の独立UHF局十数局でのテレビ放送とスタートは地味だった。
やがて起きたブームの中心、情報の拡散に威力を発揮したのはインターネットだ。ウェブサイトに仕込まれた謎解きなど、ネットでしか楽しめない要素も新しかった。
なかでも大きな役割は果たしたのが、当時の若者に絶大な人気を誇ったニコニコ動画である。ハルヒダンスと呼ばれたエンディング「ハレ晴レユカイ」のダンスシーンの再現など関連動画がアップされると、これが人気に拍車をかけた。ニコニコ動画の特徴の映像コメント機能が、ネット上にファンコミュニティを作り上げた。
いまではごく当たり前のネット共有、SNS拡散型の人気拡大のルーツには、『涼宮ハルヒの憂鬱』がある。


平成も後半に入るとアニメの制作本数は、うなぎ登りに増え続ける。それと同時に「ヒット作が読めない」という声が大きく聞こえる。近年の特徴は当初意図していなかった思わぬ大ヒットが生まれることだ。『空の境界』、『TIGER & BUNNY』、『この世界の片隅に』、『おそ松さん』、『ユーリ!!! on ICE』、『ポプテピピック』……。これらの作品は、いずれもファンからの熱烈な支持が人気をさらに拡散していった。それにはネットを媒介とした口コミが大きな役割を果たした。そうした社会現象の源流に『時をかける少女』や『涼宮ハルヒの憂鬱』があるのだ。

-- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- -- --

「社会現象」の視点でとりあげた平成アニメ5タイトル。まだまだ大ヒット作、ムーブメントはあるはずだ。みなさんが熱狂した作品はあっただろうか?

文/数土直志
(すどただし)アニメジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

最終更新:5/17(金) 14:41
FRIDAY

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事