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オスがメス化!? フクロムシに奴隷にされたカニの皮肉な生涯【えげつない寄生生物】

5/17(金) 7:00配信

デイリー新潮

オスのカニであっても卵を抱かせる

 フクロムシは、オスのカニでもメスのカニでも無差別に寄生します。オスのカニは卵を産まないので、卵を守る習性は本来ありません。しかし、フクロムシに寄生されたオスのカニは、不思議なことに徐々にメス化していくのです。フクロムシに寄生されたオスは、脱皮を繰り返すごとにメスのようにハサミが小さくなり、メスのように腹部が大きく広がっていきます。そして、もともとはオスであったカニも、まるで母親になったかのようにフクロムシの卵を自分の卵のように大事に育てようとします。そして、メスのカニが自分の子どもを孵化させ海中に拡散させるように、このオスのカニもフクロムシの卵の世話をし、フクロムシの卵が孵化するとそれらの個体を海中にまき散らすような行動をします。このようになったカニは自らの生殖機能を失ってしまいます。

 つまり、フクロムシに寄生されたカニはみずからの子孫を残すことはできず、ただフクロムシに栄養を与え、卵を守り、孵化したフクロムシの子どもたちを拡散させるためだけに生きていくまるで奴隷のような一生を送ることになります。

 こんなにも栄養を奪われ、奴隷のような生活を強いられるフクロムシに寄生されたカニの寿命は短くなりそうな気がします。ところが、繁殖能力を奪われているため、繁殖に使うエネルギーが抑えられ逆に長生きします。そのせいで、さらに長期間に渡ってフクロムシの子どもを育てていくという皮肉な結果になるのです。

存在感のないフクロムシのオス

 フクロムシが発見された当初、フクロムシは雌雄同体と考えられていました。なぜそう考えられていたかというと、フクロムシを解剖すると、大きな卵巣の下に小さな精子の詰まった組織のようなものがあったからです。その後の研究によって、その精巣だと思われていた組織が実はフクロムシのオスであることが判明しました。

 つまり、カニの腹の外側についている袋のような部分のほとんどはフクロムシのメスの卵巣です。そして、オスはその外側に出ている袋の片隅にいます。しかも、宿主であるカニが脱皮するときやフクロムシの孵化後には、この袋は一緒に無くなってしまいます。ということは、カニの脱皮の度に、袋の中にいたオスは海中にぽいっと捨てられてしまうのです。もちろん、フクロムシのメスはカニの体内に侵入しているため、脱皮の度に捨てられるなんてことは決してありません。

 フクロムシのメスは自分が取りついているカニの脱皮が終わると、またカニの外側に袋状の生殖器を露出させます。しかし、新しく出てきた袋の中にはオスがいません。そのため、フクロムシのメスは新しいオスを袋の中へ呼び寄せなければなりません。

 この時も、フクロムシに心も体も乗っ取られている宿主であるカニが、フクロムシのオスを呼び寄せるために必死に頑張ります。操られているカニは、しきりにお腹を動かし、腹の外側の袋(フクロムシのメスの卵巣)の中にフクロムシのオスを取り込もうとするのです。

 このように、フクロムシに寄生されたカニは何度脱皮して殻を脱ごうとも、フクロムシから逃れることはできません。哀れ寄生されたカニはホルモンと脳を操られ、オスさえもメスのようになり、フクロムシの卵を一生守り続けることになります。

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最終更新:5/17(金) 7:00
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