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蝶に始まり光にたどり着いたアーティスト、ルート・ブリュック。

5/18(土) 17:31配信

フィガロジャポン

独自の成形技法と豊かな表現力で創る、物語のある作品群。

会場に足を踏み入れて、まず目に飛び込んでくるのはブリュックの人柄がよくわかる作品『ライオンに化けたロバ』だ。マーリアはここで笑いながら、ライオンの腹部にいるロバを指差す。

「母はとてもユーモアのある人でした。ライオンの顔に目が行きますが、よく見るとロバがいる。どんな物語がこの作品にあるのでしょうか」

ライオンの威を借るロバと考えることもできるようでいて、男性性の象徴としてのライオンを宝石のような色と草花で覆うことで、その二面性を表現しているのかもしれない。また一方で、これはブリュックの夫であり、フィンランドのデザイン史に大きな足跡を遺したタピオ・ヴィルカラを表現したものではないかと見る向きもあるとか。なにより、ブリュックが1950年代に確立した成形技法の集大成とも言われ、その豊かな表現力に目を見張る。

今回の展示は2フロアから成る。3階に始まり2階へ向かうと「作家としての展開の仕方がわかります」とマーリアは話す。

「2階はとても人気の高い蝶の作品からスタートします。ここでは、セラミックだけではなくテキスタイルの仕事など、包括的にブリュックの仕事を見ることができます。私がいつも母を尊敬するのは、とても人気の高かった蝶に止まることを良しとしなかった強い姿勢です。この先も表現を探りながら作品を展開したことは、アーティストの立場から尊敬をしています」

そう話しながらマーリアは特別に、と言って陶板の一つを手にとってひっくり返し、裏側を見せてくれた。「裏にもとても丁寧な仕事をしているの。実に素晴らしい作家なんです」

そうして次にマーリアが指差したのは、立体的なブロック状の陶器とタイルを組み合わせた作品『都市』。この作品を見るとブリュックが建築家を目指していたこと、そしてその情熱を読み取ることができるという。

「この作品はタピオのお気に入りのひとつでもありました。建築的で緻密な構成を見ていただくことができます。こうして作品を見ながら、母はどんな展開を考えていたのだろうと思考を辿ることがあります。作品を見るたびに、どうやってこの色を出したのか、どうしてこれほど緻密な作業ができ、思考ができるのか。光と闇の取り込みかたにも驚きます。母はよく高いはしごに登っては小さなピースを入れ替え、レリーフ作品を制作していました。毎日のように飽きずにそれを繰り返していた。母は本物のアーティストでしたね。母から直接アートを学んだことはありませんが、実験を繰り返したそのキャリアからさまざまなことを学びました」

「父は母の才能を誰よりも認めていました。父が理論派だとすると、母は感覚的な人。父は時間厳守だけど、母はいつも遅れてくるというようにね(笑)」

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最終更新:5/18(土) 17:31
フィガロジャポン

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