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蝶に始まり光にたどり着いたアーティスト、ルート・ブリュック。

5/18(土) 17:31配信

フィガロジャポン

間近で観て凹凸やグラデーションを感じたい、抽象的な大型壁画。

日常的なモチーフから陶板を制作していたブリュックは、やがてタイルを手作業で組み合わせた抽象的な大型壁画を手がけるようになっていく。「その作品はやがて、光と陰で多彩な表情を描くようになります」とマーリアは言う。

ブリュックのものづくりは、独自の文化や生命観を持つフィンランドの風土に根ざしたものと言えるだろう。手仕事による制作を貫いたその作品からは、神々しく詩的な感性を感じとることができる。愛らしくロマンティックでありながら、私たち日本人にもどこかに根ざしている自然崇拝を背景に持つ、神秘性のようなものが宿るのを感じないだろうか。マーリアも作家として新潟・越後妻有などを訪れ、目の当たりにした美しい風景を共有することが作品づくりに根ざすもののひとつだと話す。タピオ・ヴィルカラは夏になると別荘にこもって創作に励んだというエピソードが知られるが、それは家族みなで行われたものだと彼女は続ける。

「夏になると2~3カ月ほど、ラップランドの森の奥にある別荘で過ごしました。ボートで島へ向かうという特殊な環境で、道路もなければ水や電気もありません。白夜の季節で1日中陽が沈むこともなく、もちろん電話がくることもない。そんな環境で母と父は自身の作品に取りかかっていました。そんな暮らしをしながら、(代表作のひとつである)大統領公邸のモザイク壁画『流氷』のマケット(彫刻などにおけるスケッチ的な模型のこと)を作っていたんです。ふたりともヘルシンキに戻ると多忙で、特に父は海外に出かけていることも多かった。夏の時間は家族だけでいられる貴重なものだったのです。そしてふたりにとっては自然と向き合う大切な時間だったのでしょう」

ブリュックがたどり着いた、白の境地へ。

抽象的なのに物語性に富んだ白い作品の数々が、東京駅の美しいレンガと呼応しながら、生涯を通じて美の思索を続けたルート・ブリュックの展覧会は幕を閉じる。あらためて展示を回りながら、「東京とフィンランドでは、違う物語、違う視点を持った展示となりました。けれど、どちらも母をよく表しているように感じます。ブリュックを身近に感じられるし、人となりもよくわかる展示です」とマーリアは話す。

「ふたりとも日本に来たことはありませんでした。けれど私が両親から最初に贈られたのは陶器の日本人形。子どもだったので何度も落としたけれど、その度に直してくれた大切なものです。父はすでに日本でよく知られた存在ですが、いまこうして母と日本に来られたこと、そして日本のみなさんにその仕事を知っていただくこと。それを何よりもうれしく思っているんです」

『ルート・ブリュック 蝶の軌跡』
会場:東京ステーションギャラリー
会期:2019年4月27日(土)~6月16日(日)
開館時間:10時~18時 ※金曜日は20:00まで開館。入館は閉館の30分前まで
休館日:6月10日をのぞく月曜
入館料:一般¥1,100
tel:03-3212-2485
https://rutbryk.jp/

※会場内は一部撮影可能。
※2019年~2020年にかけて、伊丹市立美術館・伊丹市立工芸センター、岐阜県現代陶芸美術館ほか全国数会場の美術館で開催予定。

texte:YOSHINAO YAMADA

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最終更新:5/18(土) 17:31
フィガロジャポン

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