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SNSがメンタルヘルスを崩壊させる理由を社会的比較理論をもとに解剖

5/18(土) 22:20配信

ハーパーズ バザー・オンライン

 社会的比較理論は、厳密に言えば、リサーチのコンセプトとしては最先端のものではない。
 1954年、社会心理学者レオン・フェスティンガーが、人々が自分の能力と成功を評価する方法について論文を発表し、非常に影響を与えた。人は人生における自分のポジションを、自分が属するコミュニティ内の他者と比較することにおいてのみ判断できるというのが、彼の論点だった。コミュニティ内では自分が序列に組み込まれるから、つまり、コミュニティの境界線が非常に重要になるということだ。興味深いことに、誰かが自分と似ているように見えれば見えるほど、その人たちとの関連で自分のことをより高く評価するのだ。

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その昔、私たちがまだオフラインで暮らしていた時代は、社会的比較が機能するのは2通りの方法しかなかった。上方向と下方向だ。他者が自分より悪いポジションにいると評価すれば、それは自己評価や自尊心の向上に結びつくことが多かった。しかし、自分より上等の生活を送っているとか優れた能力や特質を持っていると考えられる人々を見ると、不足感や自信喪失を生み出す傾向にあり、全体的な自己評価にネガティブな影響をもたらした。

見れば傷つくのに、目をそらせない

オンラインのコミュニティでは、誰もが自分のベストだと思う特質に特にハイライトを当てようとして選んだ、まさに極めてベストな面を見ているとしたら、知り合いのかなり大部分の人と比較して自分は劣っていると感じる人が多いとしても不思議はない。ソーシャルメディアという環境におけるヒーローたちの多くは、次元の違う美しさや才能で名を成しているセレブリティではなく、「自分たちと同じような人」であるからこそ、個人比較が厳しくなってしまうのだ。

私は著書『Why Social Media is Ruining Your Life』を執筆する中で、現代のメンタルヘルスを崩壊させているネガティブな影響の根本原因の大部分になっているとわかったのは、キャリアにおける成功からボディイメージ、恋愛、母親業にわたって絶え間なく繰り返される、こうした自己評価だった。

土曜の夜、スクロールマラソンに陥り、他人の人生についての写真や情報に夢中になって自分の存在に薄暗い影を落としてしまうのはたやすい。私はなぜ自分の家が買えないのだろう? なぜ私には愛するパートナーがいないのだろう? なぜ妊娠できないのだろう? なぜ太ももの間に隙間がないのだろう? そして非常に影響力あるインフルエンサーたちを見ては、自分が「クロエ(Chloe)」の新しいバッグを17タイプ持てないのはなぜ?と思ってしまう。これを人生全体に対する不満感と呼ぼう。それがメンタルヘルス危機の温床になっているのだ。

不十分だという認識が原因の鬱にせよ何の目標も達成感もないという不安感にせよ、ソーシャルメディアにはネガティブな自問自答のスパイラルにはまり込むのに必要なものがすべて揃っている。落ち込みが深く、ソーシャルメディアのメッセージに対して傷つきやすい人ほど、自分に対してより悪い選択をしがちなこともわかっている。つまり、ソーシャルメディア中毒は一見、本質的にマゾだ。見れば傷つくのに、目をそらすことができないのだ。

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最終更新:5/18(土) 22:20
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