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阿川佐和子さんに学ぶ 人の話を聞く力(井上芳雄)

5/19(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

井上芳雄です。人の話を聞くって、難しいですね。僕はインタビューされることが多いのですが、自分のラジオ番組にゲストを呼んだり、トークショーの司会をやるときは、逆に話を聞く側になります。すると話を膨らませたり、盛り上げるのは難しいと思うことがたびたび。阿川佐和子さんの書かれたベストセラー『聞く力』を読んで、参考にさせてもらったりしていたのですが、先日その阿川さんと初めてお会いする機会がありました。
5月4日に放送された、阿川さんのトーク番組『サワコの朝』に出演したときのことです。お会いできてうれしかったし、やっぱり聞き上手だなと感銘を受けました。
番組では、ミュージカルオタクだった子どものころの話や『エリザベート』のオーディションを受けてデビューしたころの話、お芝居の稽古で蜷川幸雄さんに叱咤(しった)された話などをしました。30分の番組ですが、収録は90分くらいあったでしょうか。あっという間に過ぎて、楽しい時間でした。人の話を90分も聞き続けるって難しいことだと思います。さすがインタビューの達人です。
話した内容は、これまでにもいろんなところでお話しさせてもらっていたことです。でも、すごく新鮮な気持ちで話せました。聞き手として阿川さんは何が違うのだろうか、と考えてみたのですが、話を広げたり、深めたりするのが上手なのだと気づきました。
収録のときに盛り上がったのが、アメリカでの中学校時代の話。父親の留学を機に、一家で1年間アメリカに住んでいたときのこと。現地の中学校には日本人が僕1人だけで、英語がわからないし、友だちもいなくて、全然楽しくなくて大変だったという話です。
阿川さんも似たような経験をしたことがあるそうで、「そういうときって、こういう気持ちですよね」とか「え!? そんなことになったの」といった感じで、共感してくれているのがすごく伝わってきます。僕も話しているうちに、当時の感情がよみがえってきました。かと思ったら、「そうは言っても、実はこうだったんじゃないですか」とか「それは、例えばどういうことですか」みたいに、違う角度から突っ込んできたり、揺さぶってきたり。そのたびに僕も一生懸命考えて、また話が広がっていきます。
そうしているうちに、僕のことをすごくよく分かってくれている、自分の理解者だ、みたいな気持ちになりました。阿川さんの天性なのか、計算なのかは分からないですけど、そうやって話を膨らませていくんだなと思いました。
人に話すことで自分でも初めて気づくことって、ありますよね。例えば、あのとき自分はそんなに傷ついていたのかとか、あの経験が自分にとって大きかったんだとか。だから、いい聞き手はカウンセラーのような存在だという気がします。その日は、阿川さんがまさにそうでした。

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最終更新:5/19(日) 12:15
NIKKEI STYLE

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