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ハーバードを超える難関大には「キャンパスがない」。世界の学府は『共同創造の場』に | 作家・田口ランディ

5/19(日) 11:30配信

Forbes JAPAN

作家・エッセイスト、田口ランディ氏の作品は海外でも評価が高く、翻訳刊行された国はアメリカ、イタリア、ルーマニア、中国、韓国、シンガポールなどと数多い。フィリピン、セブ島などへの海外留学も経験し、海外での活動も多い田口氏に、特集「世界の鼓動を聞く」へご寄稿いただいた。

「教育がビジネスに」から、「ビジネスが教育に」

昨年、3カ月ほど英語留学のためスコットランドとフィリピンに滞在し、その間、ヨーロッパとアジアを旅行。数にしておよそ16カ国の人たちと出会い、対話をした。痛感したのは「教育現場のボーダレス化」と「教育の無料化」だ。

日本では当たり前と思われていた教師と学生という垣根が消え、学校を「共同創造」の場としてとらえる流れが加速している。日本の教育は百年遅れている。いまや日本は教育の後進国になっている。日本では教育ビジネスがますます盛んになっているが、教育がビジネスになるという発想はすでに転換が必要。これからは、ビジネスが教育になる。

たとえば、フランスの大学校「Ecole 42」は、大学という概念を超えた、まったく新しいプログラミングの専門大学だ。教授はいない。教科書もカリキュラムもない。学費もない。

資産家の寄付金によって運営されてるこの学校では、授業は即、プロジェクト。チームごとにテーマがあり共同研究の形をとる。なにかを誰かから教わる必要はなく、ネットで情報を収集する。仲間と一緒に冒険するような学習スタイルこそ、人間の能力を開花させるのだ。Ecole 42には世界中から優秀な人材が集まり、すでに超難関校になっている。

アメリカのサンフランシスコに拠点を置く「ミネルバ大学」もやはりプロジェクト型の大学だ。創立から数年で「ハーバードに入るよりも難しい」と言われているが、この大学にはキャンパスがない。講義はオンライン。学生は世界の7都市を移動しながら学ぶ。

つまり、キャンパスが世界という発想。ミネルバ大学の授業料はアメリカの平均的な大学の約3分1で、英語力があれば誰でも入学でき、世界中から学生が集まっている。

日本は、大学教授を学生が「養って」いる

多くの国が教育の無料化を実現しているなかで、日本の教育費はいまだべらぼうに高い。言い換えれば、一人の大学教授を複数の学生が養っている構図だ。

もちろん、日本でも新しい教育へのチャレンジは生まれつつある。たとえば、今年1月に開講した「Essential Management School(EMS)」は、元早稲田大学大学院客員凖教授の西條剛央氏が立ち上げたマネジメント・スクール。私は立ち上げのゼロ期に受講生として参加したが、現役の大学教授や学長、企業経営者と共にさまざまな学歴の学生がグループで学んでいた。

EMSは、フランスの高等職業教育機関グランゼコール(Grandes Écoles)を目指しており、今後大学や大学院に限らず、本質的な教育を行っているスクールをエッセンシャルエデュケーションに認定していく予定とのこと。講義はリアル受講、オンライン受講が可能で「100人100通りの学び方」を実現。「常に最新学歴を更新する」生涯教育を提唱。現在、一期生の募集中だ。

EMSでも、教える側と教えられる側はボーダレス。共同創造の場から「部活」が生まれ、それがビジネスに発展していく。

教育で儲けるのはもう古い。学びとビジネスがボーダーになる場の創造によって、社会の自己変容を促し社会システムそのものが急速に変わる。教育による壮大なパラダイムシフトが始まっている。


田口ランディ◎東京都生まれ。作家。フィクションとノンフィクションを往還しつつ、幅広く執筆を行う。1990年代後半から配信したメールマガジンは講読読者数10万人を獲得。2000年6月に長編小説『コンセント』でデビュー、同作品はベストセラーに。2001年『できればムカつかずに生きたい』で婦人公論文芸賞を受賞。元死刑囚・林泰男氏の外部交流者として14年間拘置所に通い、その経験を元に2017年に『逆さに吊るされた男』を発表。作品は海外でも評価が高く、翻訳刊行されている。近年はその独特な視点や意見を求める海外からの要請も増え、日本の外での活動も多い。EMS一期生募集に関しては http://ems1apply.strikingly.com/

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:5/19(日) 11:30
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