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ローリング・ストーンズの最新ベストアルバム『Honk』の魅力に迫る

5/19(日) 13:00配信

Rolling Stone Japan

1971年以降の楽曲に的を絞った選曲から、デイヴ・グロールやエド・シーランをゲストに招いたライブ音源の数々まで、後期の代表曲群、圧倒的なライブ音源等を収録したローリング・ストーンズの最新ベストアルバム『Honk』の魅力に迫る。

写真3点:ローリング・ストーンズの最新ベストアルバム『Honk』の魅力に迫る

ロンドンの片隅で生まれたローリング・ストーンズが「世界最高のロックバンド」と呼ばれるようになってから60年近くが経つが、その間にバンドは20枚以上のベストアルバムを発表している。ベスト中のベストとされる作品(『フォーティ・リックス』『GRRR! ~グレイテスト・ヒッツ 1962-2012』)がバンドの全キャリアを通じた代表曲を網羅しているのに対し、よりユニークな選曲を試みた作品はストーンズの異なる一面を浮かび上がらせる。

元マネージャーであるアレン・クラインが、1964年から1971年の間に発表されたストーンズの楽曲の流通権を手にして以来、バンドのコンピレーションの大半はそれ以外の時期に焦点を当てることを余儀なくされた。最新コンピレーションとなる『Honk』(「ホンキー・トンク・ウィメン」も「カントリー・ホンク」も収録されていないことを考えると、誤解を招きがちなタイトルだと言わざるを得ない)は、バンドが71年以降に発表したアルバムからの楽曲のみを収録しているが、不可解なことにその中には他のベストアルバムに収録されたものも含まれている。3枚組のデラックス・エディションには、2000年代に残された熱気の立ち上るようなライブ音源も収録されている。本作は夏に予定されていたストーンズのツアーと同じタイミングで発表される予定だったが、ミック・ジャガーの健康状態の悪化によって全公演が延期になった今、『Honk』の意義は芯を残したまま時代と共に変化していくバンドの軌跡を描くことだと言っていい。

注目すべき点はより近作を対象とした選曲

本作は「スタート・ミー・アップ」や「ブラウン・シュガー」といった問答無用のクラシックも収録しているが、注目すべき点はより近作を対象とした選曲だ。70年代の楽曲はほぼもれなくクラシックロックを流すラジオ局の定番となっているためか、「イッツ・オンリー・ロックンロール」から軽快なギターが印象的な『スティール・ホイールズ』収録曲「ロック・アンド・ア・ハード・プレイス」への流れや、「we maaade sweet love」というフレーズが耳に残る『ア・ビガー・バン』に収録されたファンキーな「レイン・フォール・ダウン」から「ダンシング・ウィズ・ミスターD」へのスムーズなトランジションは驚くほど新鮮だ(「ミスター・D」から1983年発表の煌めくような「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」の流れには、異次元にトリップしたかのような違和感は否定できないが)。『Honk』はストーンズの過去30年間の軌跡を包括する決定盤であり、より「プロフェッショナル」となったバンドの姿を見事に捉えている。

しかしスタジオでのスキルにどれほど磨きがかかろうとも、「世界最高のバンド」たる彼らの真価が発揮されるのはステージ上だ。本作にボーナストラックとして収録されたバイタリティ溢れるライブ音源の数々は、そのことを雄弁に物語っている。洗剤の押し売りを門前払いする「一人ぼっちの世界」では、ミックはチャートのトップを飾るラッパーたち顔負けのフロウを聞かせ、「夜をぶっとばせ」では身震いしながら「君のすべての願いを叶えてみせる」と叫んでみせる。キーフとウッディは「ダンシング・ウィズ・ミスターD」でセクシーなギターを響かせ、弾けるような「シャイン・ア・ライト」では唯一無二のグルーヴを生み出している。またエド・シーランがミックのセクシーさを際立たせている「ビースト・オブ・バーデン」、デイヴ・グロールのシャウトが冴え渡る豪快にアレンジされた「ビッチ」、ブラッド・ペイズリーがミックと一緒にヘロインについて歌うことでクリーンなイメージを覆した「デッド・フラワーズ」等も聴きどころだ。しかし3枚組の本作における最大のハイライトは、やはりゲストに迎えたフローレンス・ウェルチの声がジャガーのヴォーカルと優雅に絡み合う「ワイルド・ホース」だろう。出口もプライバシーも持たない男の思いを歌ったこのマスターピースは、いまだ衰えを知らないストーンズのパワーを体現している。

Translated by Masaaki Yoshida

Kory Grow

最終更新:5/19(日) 13:00
Rolling Stone Japan

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