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町屋良平『1R1分34秒』 ボクサーの心書き込む筆力

5/20(月) 7:47配信

NIKKEI STYLE

デビュー戦を初回KOで飾った後、2敗1分けと勝てずにいる21歳プロボクサーの内面を追った『1R1分34秒』。2019年1月に芥川賞を受賞した、町屋良平の話題作だ。対戦相手を研究するなかで抱く架空の友情、唯一の友人である映画好き大学生とのひととき、一風変わったトレーナーへの反発と共感、ジム見学に訪れた女性との交わりなどが、細やかな心理描写で描かれていく。

16年に作家デビューした町屋がボクサーを主人公にしたのは、本作が2回めだ。

「ボクシングそのものがドラマチックな性質があるので、そのドラマ性を小説にするということに抵抗がありました」と語る町屋は、自身もボクシングを8年ほど続けていた。「24、25歳の頃始めたのですが、半年後ぐらいにはプロのライセンスを取りたいというモチベーションをもって練習をするようになりました」。しかし、ジム通いは、想像以上にきつかった。「自身の体力と運動神経を日々更新し続けなければいけない、追い込む大変さが身に染みて分かりました。ライセンス取得をあきらめることにした後ぐらいでしょうか。小説を書き続けるかどうか迷っていたなかで、それまで禁じ手だと考えていた“ボクシング”を書こうという気になりました」。強い思い切りと勢いで書いた『青が破れる』は文藝賞を受賞して、町屋を作家デビューに導いた。続く『しき』でダンスに夢中になる高校生を描き、今作で再びボクサーを主人公に選んだ。

「プロとして小説を発表するようになって、改めてプロボクサーについて考えられることがあると思えた瞬間がありました。自分が書くからには、既存のボクサーやボクシングのイメージに頼らず、新しい像を打ち出したいと思いました」

芥川賞の選考委員から『1R1分34秒』の主人公が「対戦相手に対する思いやりが徹底的に描かれていてボクサーとして新しさを感じさせる」と評価されたことについて、「分かっていただいたうれしさはありました」と笑みを見せた。

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最終更新:5/20(月) 12:15
NIKKEI STYLE

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