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帝国崩壊物語る スイスで復元された古代人の顔

5/20(月) 7:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

西ローマ帝国崩壊後も文化的影響が残っていた時代の人を笑顔に復元。その理由は?

 数年前、西暦700年頃の古代の男性の骨がスイスで見つかった。男性には、アデラシウス・エバルチュスと、ラテン語風の名前が付けられた。スイス、ソロトゥルン州考古学局のミリアム・ブルシュレーガー氏は「よく考えて決めた名ですね」と説明する。男性が生きていた当時はゲルマン人が北部のスイス高原に移動していた時期にあたる。5世紀に西ローマ帝国が崩壊からしばらく経っていたが、言語や文化がローマ帝国時代のものからゲルマン系のアレマン人のものに変わりつつあった頃だ。

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 もちろんアデラシウスという名前をはじめ、この男性に関することの多くは推測に過ぎない。男性の骨が発見されたのは2014年。スイス北部の町グレンヘンで、ビルの建設に先立ち中世初期の墓47基が発掘された。そのうちの1つから発見・回収された骨から復元されたのが、アデラシウスの顔だったのだ。墓は石を並べて作られ、石で覆われおり、足は北に向けられていた。この埋葬法はローマ様式のものだ。

 わかったこともある。アデラシウスは19歳~22歳で、身長168センチほどだった。骨の感染症である慢性骨髄炎とビタミン欠乏症を患っており、その影響もあって、若くして亡くなった可能性が高い。石を並べて墓が作られたということは、当時のグレンヘンでの社会的地位が、他の住民よりも高かったことを示しているかもしれない。

 アデラシウス・エバルチュスの顔の復元を依頼されたのが、考古学的に発掘された顔を復元する専門家オスカー・ニルソン氏だ。同氏は、頭蓋骨の3Dプリントで複製したものを渡され、この時代としては珍しいほど保存状態が良いことがわかった。中でも歯の状態の良さには衝撃さえ受けたという。

「これほど完璧な状態の歯は、見たことがありません」と旧石器時代の遺骨から顔を復元する仕事をしてきたニルソン氏は話す。「私にとって、貴重な仕事でした。歯の復元から始めるのが普通ですから」

 同氏は、アデラシウスの歯を強調したいと考え、復元した顔を笑顔にすると決めた。悩んだ末の決断だ。

 警察から依頼された場合、「笑顔にすることは、まずありません」とニルソン氏は言う。一つには、笑顔にすると、復元した顔の全体的な印象から注意がそらされる。もうひとつは「無意識に幸せな人物だと思い込んでしまう」からだと同氏は話す。

「知らない人を、性格まで勝手に表現すべきではないでしょう」と同氏は話す。「しかし、一方で、その人はかつて生きていて、魂を持っていたという印象を与える顔にはしています」

 これまでニルソン氏は、様々な地域、様々な時代の人を復元してきたが、スイスで見つかった中世初期の人は初めてだった。「この時代のこの地域は、非常に刺激的です。今まさに調査の真っただ中にあります。顔を復元することで、当時の歴史に、何らかの光を当てることができればと思います」

 アデラシウスは、2019年6月上旬までスイス、グレンヘンにある文化史博物館に展示される。その後、11月には同国オルテンにあるソロトゥルン州立考古学博物館で常設展示される予定だ。

文=KRISTIN ROMEY/訳=牧野建志

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