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元新聞記者も悩む、日本の新聞は生き残れるのか?

5/20(月) 12:13配信

Wedge

強まる監視活動

 気になったのが、第9章の「報道機関への情報漏えいに対するアメリカ政府の『戦争』」で触れられた報道の情報源と疑われた人物に対する米国政府の訴追例がオバマ政権以降に大幅に増えていることだ。

 その中で「アメリカ政府による大規模監視はいかにジャーナリズムを傷つけているかー。人権団体『ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)』がニューヨークやワシントD.C.の記者たちにインタビューした報告書で、1970年代、多くのジャーナリストは情報源と電話で話をしていた。政府は当時、すでに、その気になれば、それらを盗聴する技術を持っていたが、伝統的な手法による盗聴や物理的監視にはぼう大な時間と要員が必要だった。

 今日、多くのやり取りは電子的に行われるようになり、その結果、ある特定の人物の生活について、以前より多く、より簡単にアクセスでき、より簡単に保存できる記録が存在している。ワシントD.C.の安全保障担当の記者が嘆いていた。『かつては、十分に注意を払っていれば情報源を守ることができると、考えていた。いまや、そうではない、と分かった。外を歩けばそれが記録され、どこかにいればそれが記録される』」とある。

 つまり、情報、監視技術の発達により、当局は記者のすべての行動を監視することが可能になり、情報源とメールで連絡を取っただけでも相手を特定されてしまうリスクがある。まして、パソコンや携帯を当局に押収されると、連絡を取り合っていた情報源がすべて明らかになってしまう恐れがある。ということは、情報を提供する側も、情報源が明らかになることを警戒して、記者への情報提供をこれまで以上に躊躇しがちになり、調査報道を行う上で大きな障害になる可能性が出てきている。

 調査報道で思い出されるのが、1976年に公開された映画で、ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件を描いた「大統領の陰謀」が忘れられない。最近では2017年のペンタゴン(米国防総省)の秘密を暴いたニューヨーク・タイムズなど米国メディアと権力との戦いを描いた「ペンタゴンペーパーズ 最高機密文書」が記憶に新しい。

 こうした担当記者が書いた特ダネは、いずれも政府部内の内部告発が重要な役割を果たしていた。いまの情報統制が強化されたワシントンの状況では、こうした内部告発からの特ダネは生まれにくくなってきそうで、日本も同じような状況にある。

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最終更新:5/20(月) 12:13
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