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本田圭佑は豪州に何を残したのか。メルボルン・Vの同僚たちが語った『ケイスケ』のリアル

5/20(月) 10:23配信

フットボールチャンネル

 元日本代表の本田圭佑は今季限りでのメルボルン・ビクトリー退団を明言している。オーストラリアでプレーした1年間、現地での評価はいかなるものだったのか。そしてAリーグやクラブに何を残したのか。監督やチームメイトたちの証言を元に、本田の影響力とリアルな姿を紐解く。(取材・文:舩木渉)

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●あっけなく終わった優勝への挑戦

 オーストラリア・Aリーグの2018/19シーズンはシドニーFCの優勝で閉幕した。レギュラーシーズンは2位だったが、彼らのグランドファイナル制覇は戦力値で見れば順当な結果と言えるだろう。

 一方、本田圭佑のオーストラリアでの挑戦はあっけなく終わってしまった。グランドファイナルでシドニーFCと対戦したのは、レギュラーシーズン首位だったパース・グローリー。金髪の元日本代表MFが所属していたメルボルン・ビクトリーは、昨季王者ながらその場にたどり着くことができなかった。

 シドニーFCと対戦したファイナルシリーズ(上位6クラブによるプレーオフ)の準決勝では、開始3分でレギュラーシーズン中は一度も決められていなかったコーナーキックからあっさりゴールを割られ、あれよあれよと6失点。後半アディショナルタイムに本田はアシストを記録したが時すでに遅し。勝敗はすでに決していた。

 5月12日に行われた準決勝の直前から、本田は自身のSNSも含めて様々な場所で今季限りでのメルボルン・ビクトリー退団の意思を表明していた。「まだ来季どこでプレーするか決めていないけれど、ここでプレーするのは1年だけのつもりだったので、驚いたり失望したりしないでほしい」。彼はどのメディアでも、この言葉を繰り返していた。

 昨年8月にオーストラリアへ上陸を果たした際、豪『FOXスポーツ』で解説を務めるサイモン・ヒルは「本田はデル・ピエロ以来、Aリーグで最も大きな契約だ」と大きな期待を寄せていた。2012年にユベントスからやってきたアレッサンドロ・デル・ピエロは、シドニーFCに2シーズン在籍して48試合出場24得点11アシストを記録。スーパースターの名に恥じないプレーでオーストラリアを沸かせた。

 一方、本田はどうか。元イタリア代表のスターと比較されてはいたが、1シーズンでリーグ戦18試合出場7得点5アシスト、ファイナルシリーズでは2試合に出場して0得点2アシストだった。昨年12月下旬から今年2月初旬まで約2ヶ月にわたってハムストリングの負傷で離脱した期間もあったが、オーストラリアで格の違いを見せたのは間違いない。

●指揮官も絶賛した本田のリーダーシップ

 メルボルン・ビクトリーでは主に4-3-1-2の右インサイドハーフとして攻守に奔走し、中盤の低めの位置から12ゴールに関与した。序盤戦はシーズンMVPに推す声もあるほどのハイパフォーマンスを披露し、負傷離脱する前の8試合で5得点3アシストをマークしていた。

 2月に復帰してからは2得点2アシストとペースが落ち、「ホンダは復帰してからシーズン序盤のリズムを全く取り戻すことができなかった」と豪放送局『SBS』に指摘されてはいた。それでも「チームにも同じことが言え」て、「Aリーグで最も優れた選手の1人であることを証明した」とシーズンを通しての貢献には賛辞が送られていた。

 シドニーFCに敗れた直後に行われたドーラン・ワレン・アウォーズ(日本のJリーグアウォーズに相当する授賞式)では、年間MVPにあたる「ジョニー・ワレン・メダル」を決める識者による投票で堂々の4位タイに入った。栄えある受賞者となったウェリントン・フェニックスのFWロイ・クリシュナとはわずか3ポイント差しかなかった。

 欧州のトップリーグで評価されていた質の高さを存分に発揮し、Aリーグ全体に大きなインパクトをもたらした本田。もちろんメルボルン・ビクトリーのチーム内でも絶大な影響力を発揮していた。

 今月8日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ第5節、アウェイ韓国での大邱FC戦でケビン・マスカット監督や選手たちを直撃すると、本田の存在感の大きさがよりリアルなものとして浮かび上がってきた。

「彼は加入当初からチームに対し絶大な影響力を発揮していた。そもそもケイスケのことは何年も見続けてきた。例えば日本代表の試合などで。そうした経験から我々は彼がトッププレーヤーだと知っていたんだ。もちろんもう22歳ではなく、ケイスケは32歳なのだが、若い頃と変わらないクオリティがあり、チームの全員がそれを目の当たりにしている。彼は情熱や経験、そしてプロフェッショナリズムを見せることで、チームを組織としてまとめてくれた」

 マスカット監督は手放しでメキシコのパチューカから獲得したベテランを称賛する。本田自身も、豪『FOXスポーツ』のインタビューで「彼はクレバーだと思うし、すべての選手に対して深く考えている。もし彼が監督でなかったら、僕はここには来ていないと思う」と、メルボルン・ビクトリー移籍を選んだ理由に情熱あふれる指揮官の存在を挙げていた。

●「ケイスケは真のリーダーだ」(デン)

 若手選手たちもアジア屈指のスター選手から多くを学んだようだ。本田自身が先述の『FOXスポーツ』のインタビューの中で「まだ若いけれど、オーストラリアで最高の才能を持つ選手の1人だと思う」と評していた、22歳のオーストラリア代表DFトーマス・デンは次のように語った。

「ケイスケが来た時は、信じられなかった。彼はビッグプレーヤーだ。ミランやCSKAモスクワといったビッグクラブでプレーしてきた。日本代表でもとてつもなく大きな功績を残してきている。そんな選手がメルボルン・ビクトリーに来てくれて本当に嬉しかったし、彼の持っているクオリティを見せてもらていることは幸せ。今季、彼は多くのゴールを決めて、チームに本当に大きく貢献していると思う。

そしてケイスケは真のリーダーだ。彼は僕たち、もちろん若手選手のことも勇気づけてくれる。小さなことでも、そうした経験こそが彼の影響力であり、あらゆる挑戦を容易にしてくれる。それが最も大きなところで、本当にチームを助けてくれている。いつも若い選手たちに声をかけて話しをしているし、そこで彼らは自分に確信を持てるようになるんだ」

 マスカット監督も「若い選手たちと本当に多く話す機会を設けて、彼らを助けて、引っ張っていってくれたことは素晴らしい」と本田のベテラン選手としての振る舞いを称えていた。そしてまさに同じポジションで競争しながら、欧州仕込みのプロフェッショナルの取り組みを間近で見聞きしていたのが20歳のジョシュ・ホープだ。

 この下部組織出身の長身セントラルMFは「ケイスケからは本当に大きな影響を受けている。彼はピッチ内に限らず、ピッチ外でも常に正しい行いをしているし、多くのものを彼から得ることができた。もう少しの時間しか残っていないけど、彼から学び続けたいし、それを生かしてチームを助けていきたい」と目を輝かせていた。

●「教育者であり、成功者でもある」(ホープ)

 グループリーグ敗退濃厚で、直後にシドニーFCとの大一番が控えていた状況もあって若手中心で臨んだ大邱FC戦に先発していたホープは、懸命に走った。0-4という大敗を喫したものの、常に努力を怠らず最後まで諦めない姿勢も本田からの影響があったのかもしれない。

「ケイスケから何を学んだか? 全てだよ。彼は常にボールを受けて、多くのプレーに関与する。それはポジショニングがいいからできることで、僕も彼の動きからポジショニングの取り方を学んでいる。本当に素晴らしい選手と一緒にプレーできていると思う。

もちろんお互いに話しもする。例えばこういう試合を終えてメルボルンに戻ったら、彼は自分がでなかった試合だとしても、僕に何が必要なのか、成長するために何が必要なのかを教えてくれる。彼からアドバイスは僕にとって本当に助けになっているし、同じことをチーム全体、他の選手たちにもやっているよ」

 ホープは以前、豪『FTBL』に対し本田や、スウェーデン代表FWオラ・トイボネンといった経験豊富な選手たちからの学びについて語っていた。

「ケイスケは絶えず練習していて、休みを取らないんだ。彼は朝、練習場に最初に来て、最後に帰る。これは僕たち全員が持っていなければならないメンタリティだと思う。彼から学んだのは僕のような若手選手たちだけじゃない。全員が彼から学んだし、それは大きな違いを生み出している。オラやケイスケを見ているだけで、彼らがピッチ上でもピッチ外でもプロフェッショナルどういうものかを示してくれる。彼らから学ぶことで、僕のプレーは本当に大きく成長した」

●多彩な顔を持つ本田、新天地はどこに?

 メルボルン・ビクトリーの下部組織出身で、オーストラリア国外でのプレー経験がない。そんなホープにとって、20歳にして本田のような欧州のトップレベルでの実績を持つ選手とともにプレーできることは、かけがえのない経験。もはやプロフェッショナルとしての精神を備えた先輩に心酔しているようだ。

「ケイスケは言葉で『ハードワークしよう』と僕らを目覚めさせてくれる。試合の前に『みんな戦おうぜ。やるだけだよ』と声をかける。そういう発言は心に強く訴えかけてくるものがあるし、試合前でも試合中でも、誰もがケイスケを見ていて、ケイスケはみんなを助けてくれる。彼は教育者であり、成功者でもあると思う」

 ただメルボルン・ビクトリーの選手たちに、もう本田と共に過ごす時間は残されていない。22日にACLのグループリーグ最終節・サンフレッチェ広島戦が残っているものの、すでに敗退が決まっているため消化試合と言っていい状態。この試合に背番号4が出場する可能性は低いだろう。メルボルンでの挑戦は、これで終わりだ。

 メルボルン・ビクトリーは本田という選手が見せたプロフェッショナルとしての精神や価値を、財産として今後のクラブ発展への糧にできるか。

 そして本田自身も、「全てのチームや選手たちが少しずつ僕のことを理解してきた。監督たちも同じ。僕をどう止めればいいか、彼らは学んできた。毎試合、スペースや時間を得られなかった。Aリーグは簡単ではないと感じた。いい試合も、悪い試合も戦って、両方とも自分にとって素晴らしい経験になった」というこの1年の経験を自身のキャリアの今後にどう反映させていくか。

 シーズンを終えて「来季はまた、東京五輪出場のために、今年と同じように再び変えるつもりでいる」と宣言している。2020年の東京五輪まであと1年、つまりプロ選手としてのキャリア最後の勝負のシーズンを迎えることになる。

 サッカー選手としてだけでなく世界中でサッカークラブやスクールなどを運営するビジネスマンとして、さらにはカンボジア代表のマネージャーとして、教育者として、慈善活動家として……本田はピッチ内外でありとあらゆる顔を持つ。こうした多岐にわたる活動と五輪出場の夢を、いかにして同時に追っていくのか。じゃんけんでさえも絶対に負けたくない男は、自分の道を貫いたうえで目標を達成するために新天地選びもこだわり抜くはずだ。3年ぶりの欧州復帰の噂もあるが、この夏の本田圭佑の動きに注目していきたい。

(取材・文:舩木渉)

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最終更新:5/20(月) 10:23
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