ここから本文です

幸せにしたい人がいる 岡部将和がドリブルを卒業するとき

5/20(月) 19:02配信

footballista

“ドリブルデザイナー”

岡部将和がこの肩書きを名乗ってから数年が過ぎた。YouTubeに公開したドリブル動画の閲覧数は累計約1億回を記録する他、堂安律や原口元気など日本を代表する選手達からもアドバイスを求められるなどサッカー界における地位を完全に築いたと言える。そして、2019年4月には「99%抜けるドリブル理論」を言語化した著書『ドリブルデザイン』を発売。ますますの活躍が期待される中、あと数年でドリブルデザイナーを卒業する予定だという。パイオニアとして歩んできた岡部は今、日本サッカー界に、自身の未来に、何を見ているのか。

インタビュー・文 玉利剛一(footballista編集部)

――岡部さんが過去に受けられたインタビュー記事を一通り拝見させて頂きました。ドリブルに特化した技術論がテーマになっているものが多かったのですが、今回は少し視点を広げて話を伺わせて頂こうと思っています。

 「最高です。事前にマネージャーから今回のインタビュー概要の説明を聞いた時から楽しみにしていました」

――岡部さんは“ドリブルデザイナー”を名乗ることによりサッカー界で唯一無二のポジションを築かれた。これはブランディング的には素晴らしい一方で、理解がないゆえに周囲から正しい評価がされない不安や、競合がいない寂しさは感じることはなかったですか?

 「不安も寂しさもないです。けど、前例がないし、正解もない。そういう難しさはあります。ドリブルをどのように表現することがプレーヤーにとっても、僕にとっても良いものなのかは常に考えています」

――ドリブルは感覚的に解説されることも多く、サッカーの中でも言語化が遅れている分野だと思います。そうした状況の中でも岡部さんの様な人が登場する不思議をどのように解釈すればいいでしょうか?

 「僕が将棋家系であることは影響していると思います。つまり、逆算して物事を考える習慣が小さい頃からついていて。絶対に勝てる理論を細かく突き詰めるのが好きなんです。サッカーの場合は(細かく突き詰めると)個の1対1に辿り着く。まずはそこを理解できないことには11対11で勝つのは難しいんじゃないかという発想ですね。抽象的なものが苦手で、勝利の再現性をとにかく追及したいんですよ」

――理論化できれば自信にもつながりそうです。岡部さんはドリブルしている時、いつも表情に余裕があることが印象的でした。

 「僕はドリブルを技術面と精神面を連動して捉えています。技術的に99%抜ける理論があれば、精神的にチャレンジしやすいじゃないですか。だって、失敗がない訳だから。そして、ドリブルで人を抜く経験をすることで更に前向きになれる。自分自身を信じてあげられるサポートをしたいんです」

――パサーと比べてドリブラーの数が日本は少ないと思いますが、その背景を考えるヒントになりそうなお話です。

 「能力は高くてもドリブルを躊躇する子が多いのは事実です。それは失敗が怖いから。ドリブルのミスを叱る指導者が未だに多いという背景もあります。地域性もあるんですけど。関西は結構イケイケのチームが多い印象もありますし」

――今後は関西から日本を代表するドリブラーが生まれるかもしれないですね。そういう意味では岡部さんがドリブルのデザインをされた経験のある堂安律選手は関西出身ですし、精神的にも強い印象を持っています。

 「堂安選手は上手くなることに飢えている。ビッグクラブに所属して、UCLで活躍して優勝するという夢に対して強い想いをブレずに持ち続けている。だから、精神的なアプローチは必要なくて、既に持っている自信の裏付けとなる理論や、改善案を提供するようなスタンスで話しています」

――話を少し技術論に移しますが、堂安選手にドリブルを伝える中で“左利き独特の感覚”を感じられたことはありますか?よく使われる表現ではありますが、抽象度が高いです。

 「多分、(独特の感覚は)あると思います。僕もそこは突き詰めたいなと思っているテーマで。例えば、臓器を考えた時に左右対称には存在しないものがあるじゃないですか。そうなると、左側の方がスムーズである動きもあるんじゃないかと。あとは、右利きの人が多い環境でプレーする中で鍛えられる感覚も違ってくる部分もありそうで」

――日本と欧州の比較ではどうでしょう?個人差はあると思いますが、ドリブルの特徴に差は感じますか?

 「攻撃性ですかね。選択の優先順位が違うと思うんです。欧州はゴールに一番近づくための選択を取ることが多いから縦に仕掛けることが多い、一方で日本はボールを失わないことが優先される。シュートを意識しないで最初からクロスを目的にドリブルする選手が多いのも日本の特徴かもしれません」

1/2ページ

最終更新:5/20(月) 19:02
footballista

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊フットボリスタ

株式会社ソル・メディア

Issue 070
6月12日(水)発売

特別定価1000円(税込)

[特集]
18-19欧州総括
欧州カップ戦&各国リーグ戦

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事