ここから本文です

長谷部誠、35歳の飛躍。自らはどう感じたのか? 枯渇する事なき意欲と晴れやかな表情

5/20(月) 11:33配信

フットボールチャンネル

 ブンデスリーガ最終節、バイエルン・ミュンヘン対フランクフルトは5-1でホームチームの勝利となった。その結果、バイエルンはリーグ7連覇を決め、フランクフルトは目標だった来季のチャンピオンズリーグ(CL)出場権を逃した。それでも今季はCL出場権争いに加えてヨーロッパリーグ(EL)準決勝進出と躍進。その中でMF長谷部誠はリベロとして大きな貢献をした。試合後、長谷部は自らの口でシーズンを振り返った。(取材・文:本田千尋【ミュンヘン】)

●最後の最後で力尽きたフランクフルト

 精も根も尽き果てていた。5月18日、澄み渡った五月晴れに覆われたアリアンツ・アレナーー。ブンデスリーガ最終節で、バイエルン・ミュンヘンと相見えたアイントラハト・フランクフルト。力は残っていなかった。

 不慣れな過密日程の中で戦い続けたヨーロッパリーグは、9日、チェルシーとの死闘の果てに準決勝で敗退。そのわずか3日後に迎えたマインツ戦は、あえなく0-2で敗北。それからおよそ1週間の間隔が空いたが、それでもアイントラハトは、今季のELで示してきたようなインテンシティを取り戻すことはできなかった。

 長谷部は「チーム全体に最後の最後までパワーがなかった」と振り返った。

「チャンピオンズリーグの出場権はね、他の2試合の結果次第だったので、かなり厳しい状況だっていうのは自分たちも分かっていたし。最低ヨーロッパリーグの出場権は取りたいっていうのは感じていたので、最低でもポイント1は取ろうっていう風にはね、そういうものはみんな持っていましたけど。まあその中でなかなか、それを取れるくらい、ちょっとこう、最後の最後までパワーがなかったですね、チーム全体に」

 リベロの長谷部誠を中心とする守備陣は、7連覇を目前に猛るバイエルンの選手たちに呑み込まれ、前半こそキングスリー・コマンの1失点に抑えたものの、後半は堰を切ったように4失点。“ロベリー”のラストランに花を添えることになった。

 守備陣だけでなく、アイントラハトのチーム全体が、ディフェンスの強度を保つことができない。ブンデスリーガと平行して欧州の舞台を戦い抜いた後では、もう力は尽き果て、残されていなかったのだ。

●駆け抜けた今季。挑戦することの意味

 全試合同時刻キックオフの最終節を終え、他会場でマインツがホッフェンハイムを下したことで、アイントラハトは7位に滑り込む。辛うじて来季のヨーロッパリーグ出場権を獲得した。1-5での大敗だったにもかかわらず、試合後の長谷部の表情がどこか晴れやかだったのは、まずは最低限の結果を手にしたからだろう。

「よく言う二兎を追うものは一兎をも得ずということで、自分たちの中では、チャンピオンズリーグの出場権も、そしてヨーロッパリーグの優勝も両方追っていた中で、両方とも獲ることはできなかったんですけど、だけどその二兎を追わないと、やっぱり感じられなかったことっていうのは、今すごい感じている部分もあって。

 二兎を追えるチームっていうのもなかなかないし、その中で自分たちが、こういうアイントラハトみたいなチームが、これだけって言ったらあれですけど、これだけの選手層でチャレンジした意味っていうのはやっぱり考えなきゃいけないし、そういう意味では、最後7位で来季ヨーロッパリーグの予選からっていうのは、挑戦したご褒美かなっていうくらいに感じています」

 そして何より、リベロだけでなくボランチのポジションもこなしてアイントラハトを支え、戦い抜いた今季に充実感を覚えているようだ。

「個人的にもね、非常に充実したシーズンだったし、自分も前半戦の最後の1週間だけ怪我でちょっと休んで、本当にほぼフルで後半戦も駆け抜けてきて、そこでまあ、なんだろう…駆け抜けてきて感じるものっていうのはすごく大きかったと思います。だから、満足まではしていないんですけど、すごく実りあるものでした」

 特に前半戦、リベロとして示したパフォーマンスは秀逸だった。鋭い読みと出足の速さで繰り出されるインターセプト、ゴール前での固い守備、1対1で負けない強さ、強烈なキャプテンシー、チームに力を注入するビルドアップ…35歳というベテランの領域に足を踏み入れるからこそできるプレーと、35歳の選手とは思えないフレッシュなプレーを、長谷部は同時に体現し続けたのだ。

 なお、「満足まではしていない」と話すのは、「複雑な心境」もあるからである。

●リベロ長谷部が機能した理由

「両方の思いが入り混じってるというか。もちろん素晴らしいシーズンだったとも言えるとも思うし、逆にラストスパートのところで、自分たちがいたポジション(CL出場権内の4位)、残り5、6試合のプレーを考えれば、やはりリーグでもより良い結果を獲れたんじゃないかという思いももちろんあるし、まあ、複雑な心境ですけど」

 長谷部は、ELの決勝トーナメントを勝ち進み、ブンデスリーガの戦いも佳境に入る「ラストスパート」の局面で、“難しさ”を感じていたという。

「周りの選手との兼ね合いで、周りが動けていない時に自分がやることが多くなると、自分のパフォーマンスも少し落ちてくるというか、やることが多くなる分、上手く行かない所が多くなってくるなあ、と。本当にチームが走れて動けて頑張ってくれている時っていうのは、自分がプレーの中ですごく狙いを定めやすいというか、そういうものを感じていたんですけど…」

 後ろを3バックにして、その中央に熟練の日本人フットボーラーを置けば、直ちにリベロの長谷部が機能するわけではない。まずチーム全体が守備の意識を統一し、高いインテンシティを保つことが不可欠だ。他の9人が守備を怠らないことで、長谷部は最後の番人としてのプレーに集中し、「狙いを定め」、要所で敵の攻撃を潰すことができる。

 だが、「周りの選手」の間にも疲労が蓄積し、「周りが動けていない」と、長谷部も「周り」をカバーしなければならない。守備の範囲と負担が増え、リベロとしてのプレーだけに集中することはできなくなってしまう。長谷部は、こうした“難しさ”を、大量失点を喫したこのバイエルン戦でも感じたという。

「残りの5週、6週の中では、そこ(リベロとして狙いを定めたプレーをすること)がすごく難しくなってきていた部分もありましたし。1人の選手として、そういうチームが難しい状況でもチームを助けたり、そういうことができる選手が本当に良い選手だと思うので、そういう部分では自分の、もっと良くしないといけないっていう気持ちもね、最後の6週で余計に感じたし、そういう部分では…まあ、まだまだですね」

●晴れやかだった長谷部の表情

 しかし、自分のプレーが上手く行かないことの要因を「周りの選手との兼ね合い」に見出しつつも、「周りの選手を」責めるのではなく、チームを助けるために自己の改善を図ろうとするところは、長谷部誠というサッカー選手の骨子なのかもしれない。

 そして35歳にして「まだまだ」と言う。「一年を振り返れば非常に充実していた」と語る長谷部。「成長を感じている」からこそ、その意欲が枯渇することはないようだ。

「一年を振り返れば非常に充実していたし、良い時もそうでない時も両方ありましたけど、でもこの歳になって充実して、ELとかこういうリーグ、舞台、場所でやれるっていうのは幸せなことですし。そしてプレーするだけではなくて、自分の成長も感じています。

 そういう部分で言えば、良いシーズンを送った次のシーズンは非常に難しいのであれですけど、また来シーズンに対するモチベーションっていうのも、しっかり休んでから考えていきたいと思います。10何年ぶりに日本代表の活動がないオフに入れるので、まあそれはそれで、これだけ戦ったので、ちょっとゆっくりしたいな、と思います」

「これだけ戦った」――。そう言い切れるからこそ、バイエルンとの最終戦を終えた後の長谷部の表情は、どこか晴れやかだったのかもしれない。
 
(取材・文:本田千尋【ミュンヘン】)

フットボールチャンネル

最終更新:5/20(月) 11:33
フットボールチャンネル

記事提供社からのご案内(外部サイト)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事