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そのDJたちは「コード」で踊らせる──人間と機械が“共創”するアルゴレイヴの世界

5/20(月) 19:11配信

WIRED.jp

レニック・ベルは、小さなテーブルに置かれたコンピューターの前に立っている。ここはダンスフロアの真ん中だ。ベルは眼鏡越しにコンピューターの画面を見つめながら、無表情で素早く効率よくタイピングする。周囲を取り囲む人々は、ベルがつくり出す音楽に合わせて体を揺らせている。

【音】人間と機械が“共創”するアルゴレイヴの世界

弾けるようなトムトム、くぐもったテクノ系シンセサイザー、澄みわたるシンバルの音が、巨大なサラウンドサウンドシステムから溢れ出る。照明はすべて消されており、広いダンスフロアを照らし出すのはコンピューター画面の光とゲーム用メカニカルキーボードの赤いLEDバックライト、スクリーンに投影されたPC画面のライヴ映像だけだ。ダンスフロアには約100人がいて、ほぼ全員がスクリーンを凝視している。

ただし、投影されているのはサイケデリックなアニメーションや見知らぬ風景といった、エレクトロニックミュージックのギグでよく目にする映像ではない。そこに映し出されているのはコードだ。白いフォントで等幅に書き出されるコードが、黒い画面を埋め尽くしている。

ベルがキーボードに指を走らせると、「atmo stab2」、そして「ensOsakaArpAtmo14」というサウンドセットが呼び出される。そこにシンセサイザーの素晴らしいアルペジオが浸透していく。何にも縛られない、少し調子の狂ったアルペジオ。気持ちいいけれどエッジが効いていて、まるで少し激しい暖かい風のようだ。

高音域ではスネアドラムの軽快な音が聞こえるが、低音での動きは少ない。ベルは低音域に厚みを出そうと「kitBleepFtech」をロードし、「highGlobalDensity」というコマンドを打ち込んだ。すると、バスドラムの音がスピーカーから鳴り響き、あごがカタカタと鳴りそうな低音の巨大な波が押し寄せてくる。

ヴィデオプロジェクターが激しく振動し、スクリーンに並ぶコードがピンク色に滲み始めた。それを目にした人々は叫び声を上げる。ベルが観客に向けて打ち込んだメッセージは“文字列”となり、スクリーンを洪水のように埋め尽くした。

「The old patterns are dead.(古いパターンは死んだ)」──。

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最終更新:5/20(月) 19:11
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