ここから本文です

「特撮ヒーロー」手袋でブレーク 香川の工房の奇跡

5/20(月) 12:06配信

NIKKEI STYLE

■コスプレから正装用まで フルオーダーで世界へ

 危機一髪の窮地から救い出してくれたのは、特撮ヒーローだった――。テレビ番組の話ではない。日本有数の高級革手袋メーカーが演じた逆転劇の筋書きだ。舞台は手袋の主要産地である香川県、主役は親族6人で切り盛りする出石手袋(さぬき市、出石尚仁社長)。日本にはファッション分野でキラリと光る業者が多いが、サプライチェーンの激変や後継者不足で苦境が続く。オタクを味方につけた零細企業の一手は、起死回生のヒントになるだろうか。

【写真はこちらで】「特撮ヒーロー」手袋からドライビンググローブまで

■知る人ぞ知る高級革手袋、10年前は経営どん底

 富裕層がフルオーダーで作る紳士物正装用白手袋。あるいはフェラーリやポルシェのオーナーが求めるドライビンググローブ。出石手袋が製造する年2000~3000双の手袋は、鹿革などの上質な皮革を使った知る人ぞ知る高級品だ。今は続々と増える注文で手いっぱいだが、10年ほど前には経営はどん底だった。

 香川県は国内の手袋生産の9割を占める。東かがわ市を中心に一時は300の業者がひしめいた。今も100ほどの零細企業が経営を続けるが、ほとんどがOEM(相手先ブランドでの生産)。後継者難や顧客企業の海外への生産移転で廃業が相次いだ。

 出石手袋は1960年代に出石尚仁さんの両親がミシン1台で始めた。70年代のスキーブームで産地が潤い、出石手袋もスキー用手袋の部分縫い請け負いから、皮革を仕入れ完成品を作る一貫製造へと事業規模を拡大した。高校を卒業した出石さんは20歳で後継ぎに。バブル期になると再びスキーブームが到来し、スキー手袋に特化して製造を続けた。

 ところがブームが一気に冷え込んで特需は消失。周囲が続々廃業する中で細々と革手袋製造を続けた。立体的で耐久性のある手袋づくりが得意だったため「小ロットで五輪選手の手袋や分厚い革の作業用手袋を作りました」と出石さん。注文生産で腕は磨き続けたが在庫はかさんだ。「試しにそれをヤフオクに出してみたら、思わぬ反応がきたんです」

■バイク愛好家から問い合わせ、ハーレーのイベント回り受注

 分厚い革手袋に目を付けたバイク愛好家数人から「バイクのグローブが作れませんか」と問い合わせがきたのだ。日本ではオーダーで革手袋を作る業者がほとんどいない。出石さんは新たな需要の誕生を予感した。要望に応じてバイク用革手袋の生産を始めるや、全国のハーレーダビッドソンのイベントなどを回り注文をとった。「CACAZAN」のブランド名をつけ、1万5000~2万5000円で販売した。高級革手袋に活路を見いだしたのだ。

 収益の柱を1本見つけた矢先、また別の注文が来た。「仮面ライダーの手袋がほしい」。相手は企業ではなく個人。熱烈なファンなのだろう。確かに仮面ライダーはバイクに乗る。これまで作ってきたバイク用手袋と基本は同じだ。もちろん注文に応じた。わずか1双の特注品。だが、これは復活劇の序曲にすぎなかった。

1/2ページ

最終更新:5/20(月) 18:00
NIKKEI STYLE

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ライフスタイルに知的な刺激を。
生活情報から仕事、家計管理まで幅広く掲載
トレンド情報や役立つノウハウも提供します
幅広い読者の知的関心にこたえます。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事