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気候変動がメンタルヘルスに与える影響、米国内のケースをレポート

5/20(月) 23:17配信

Rolling Stone Japan

2017年9月、米サンフランシスコで41.1度という記録的な猛暑を迎えたとき、精神科医のロビン・クーパー医師は患者の一人がめまいと発熱を訴えたのを聞いて、初めてそれを知った。

写真1点:気候変動がメンタルヘルスに与える影響、米国内のケースをレポート

その患者はある日、通気性の悪い仕事場で卒倒したという。緊急救命室のドクターはウィルスの感染を疑った。だがクーパー医師は、彼女が処方した薬は熱に反応すると麻薬のような作用を起こすことがあるのだと、患者に説明した。統語失調症や双極性障害などによく使われる抗精神病薬は、人体の体温調節機能を損なう場合がある。これが、気温とともに統語失調症の患者の入院率が急増する理由のひとつだ。「患者には、猛暑の際はこれらの薬が害になることを覚えておくように、と伝えました」とクーパー医師。「もう原因が分かったので、次からは大丈夫でしょう」

世界中で気温が上昇する中、「次」が起こる頻度はどんどん高くなるだろう。薬と熱の化学反応が引き起こす危険は、気候変動がメンタルヘルスに及ぼす影響の懸念が高まっている理由のひとつにすぎない。2018年後期に公表された政府主導の第4次全米気候調査では、気温上昇、異常気象、海面上昇によって引き起こされる現象のひとつに、メンタルヘルスの問題とストレスが挙げられた。「この2年間、気候変動の問題に目が向けられています」と言うのは学術誌Traumatologyの編集長で、トゥレーン大学の防災対策アカデミーの主任を務めるレジー・フェレイラ氏。「災害がトラウマを引き起こすことは知られていますが、気候変動によって災害は深刻化しています。災害悪化の原因に目を向け、事前に予防策を練ることが必要です」

メンタルヘルスの専門家はすでにこの脅威に取りかかり始めている。アメリカ精神医学会(APA)の2019年総会は、プログラムに気候変動関連の講演が6つも組み込まれている。クーパー医師や彼女の医師仲間らの努力の甲斐あって実現したものだ。2017年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の精神医学の助教授でもあるクーパー医師は同僚とともに「気候と精神医学の会(CPA)」を2017年に立ち上げた。「精神医学の専門分野はそれぞれバラバラですが、全員がこの問題に対し、自分たちは何ができるかを話し合っています」と言うのは、地域精神医学を専門とするデヴィッド・ポラック医師。CPAの創設メンバーで、オレゴン健康医学大学(OHSU)の公共政策名誉教授だ。「メンタルヘルス問題の将来について話し合いつつ、気候変動のことも頭に入れておかねばなりません」

気候変動がメンタルヘルスに及ぼす影響には2つある。将来に対する不安の増大と、洪水やハリケーンといった気候災害でトラウマを受ける人の増加だ。さらに深刻な事態になることが予想される中――国連の気候変動に関する政府間パネルは10月、地球の気温を12年以内に産業革命以前よりも1.5度以下に抑えることを提言。また先週には、100万種以上の生物が絶滅の危機に瀕しているとの報告書を公表した。存続の危機を懸念する人の数は日に日に増している。デヴィッド・ウォレス-ウェルズ氏が新著『The Uninhabitable Earth(原題)』でも記しているように、気候変動への不安は「気候心労」「気候鬱」とも呼ばれている。「世界の終わりについて考えを巡らせると絶望感に襲われるのは人間の性かもしれないが、気候変動の魔の手が少しずつ形を現しつつある今、この先の世界の未来がどうなるのかを考えるとぞっとする」

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最終更新:5/20(月) 23:17
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