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自社株買い加速と海外M&A減速が、市場に示唆するもの

5/20(月) 16:20配信

ダイヤモンド・オンライン

● 本邦企業による自社株買い加速 の一方でM&Aは減速

 本邦企業の資金利用動向に変化が見られる。自社株買いが増加する一方、海外企業の合併・買収 (M&A) は頭打ちとなっており、今年は構造的円売りの減少が想定される。筆者の統計分析では、国内勢による構造的円売りの減少は、リスクセンチメントに対する円の感応度を回復させた。

 7月の参院選を前にした円高と景気減速を受け、政府に対応を求める圧力が強まりつつある。日銀が有効な緩和手段を欠く中、政策ミックスは財政拡張 (消費増税延期/経済対策の導入)に傾斜せざるを得ない。資金フローと政策ミックスは、リスクオフ時の円高とリスクオン時の日本株高を示唆する。米中貿易戦争の激化を踏まえ、ユーロ円等のクロス円の一段の下落にも注意を要する。

 本邦企業による今年の自社株買い発表額が過去最高を更新する一方、M&A活動は循環的に頭打ちとなっている。年初来の自社株買いの額は5月15日までにすでに4.9兆円と、過去最高ペースで推移している (2018年は通年で6.3兆円)。一方、本邦企業による対外M&A総額は、武田薬品工業によるシャイアー買収の影響を除くと年初来ほぼ横ばいであり、6ヵ月移動合計では年初来約2兆円減と、減速が見られる。

 本邦企業による自社株買い増加の背景には、(1) 低金利環境下での潤沢な現金、(2) 政府によるコーポレートガバナンス改革推進、(3) 製造業サイクルの減速を背景とした企業の設備投資やM&Aに対する自社株買いの選好、という3つの要因があると推察される。

 一方、対外M&Aの減速傾向は前例を踏襲しており、本邦のM&A活動は日本の海外からの工作機械受注 (およびその他のグローバル製造業活動の先行指標) に約1年遅行する経験則がある。

 不確実性が再び高まっている米中貿易戦争を踏まえると、対外M&A案件の発表ペースは少なくとも向こう2-3ヵ月は低水準に留まろう。対外M&Aの発表から完了までの所要期間は加重平均で4ヵ月を要し、今後数ヵ月はM&A取引に伴う円売りが減少する蓋然性が高い。

 対外M&A活動および対外証券投資の減速と海外勢による日本株売りの反転を背景に、過去数週間は円売りが減少していると推察される。事実、東京市場の取引時間帯におけるドル円の上昇基調は昨年11月で失速した。

 今年のドル円の変動は主としてロンドン市場の取引時間帯に観測されており、海外投資家のドル円キャリートレード増加という見方と整合的である。これがおそらくドル円を含む円のリスクセンチメントに対する感応度回復の背景にあると推測できる。

● 景気判断6年ぶり「悪化」 政策当局への圧力が高まる

 世界貿易の減速と円高を背景に、内閣府公表の景気動向指数は7月の参院選を前に悪化しており、政府は景気の基調判断を「悪化」に下方修正した。「悪化」判断への引き下げは前回景気後退時の2012年以来である。

 また、先行指数は、過去2回の景気減速局面である2014年および2016年に近い動向を彷彿とさせる低下を示している。過去2回の低下局面では、同指数は国政選挙の5-7ヵ月前に底打ちしたが、回復には時間を要した。いずれの場合も安倍政権は選挙の約1ヵ月前に消費税率の8%から10%への引き上げ延期を決定し、ほぼ並行して日銀も追加緩和を実施した。

 過去の動向を踏まえると、景気への懸念が高まる中、参院選を控えて政権は経済と金融市場のテコ入れを模索していると推測できる。

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最終更新:5/20(月) 16:30
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