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【MLB】大量採用、大量解雇、ビジネスライクなメジャーのファームシステム

5/21(火) 16:03配信

週刊ベースボールONLINE

 現在日本ハムに在籍する村田透投手をインディアンス時代に取材したとき、筆者が覚えた言葉が「オーガニゼーショナルプレーヤー(組織のための選手)」だった。

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 26歳で渡米し2011年1Aからのスタート、マイナーのサバイバル生活に耐え、15 年6月メジャーで初先発の機会を勝ち取った。3回1/3を5失点(自責3)で敗戦投手だったが、その年3Aで15勝を挙げ、リーグの最多勝投手。またメジャーで機会を与えてもらえるのではと思いきや、球団関係者は「いやどうだろうか。彼はオーガニゼーショナルプレーヤーだから」という冷たい言葉だった。

 ご存じのようにアメリカのマイナーシステムはルーキー・リーグ、1A(3段階あり)、2A、3Aとなっている。段階的にプロスペクトを育成していく。例えば今季からダイヤモンドバックスのマイナーで投げ始めた吉川峻平は、1A(ハイA)でスタートを切った。今年の目標は先発で中4日のローテーションを守り、合計で100から120イニングを投げること。24歳の年齢ゆえ、今季中にハイAから2Aに進ませたい。

 吉川は契約金に65万ドルを投資した選手。球団としては、イニングも制限し大事に育てる。とはいえ、マイナーもれっきとしたプロの興行のため、イニング制限の、取扱い注意の選手だけだと全試合を消化しきれない。

 そこで「オーガニゼーショナルプレーヤー」が残りの試合やイニングをまかなうのである。それにしても、3Aで15勝してもメジャーで通用しないと決めつけられていたのには正直、驚いた。MLB球団は毎年新たに80人前後の若い選手と契約し、同じだけの人数の首を切るが、獲得選手の扱いは平等ではない。

 例えば田澤純一は09年、レッドソックスと3年総額400万ドルのメジャー契約で当然大事に扱われた。実力もあり1年目からメジャーキャンプに呼ばれ、2Aの開幕投手、7月に3A、8月にメジャー昇格を果たした。ヤンキースの加藤豪将は13年、18歳でヤンキースからドラフト2巡指名、契約金84万5700ドル。しかしながら1Aで打率1割台後半から2割台前半と不振が続き、一時は首の心配もあった。そうならなかったのはドラフト2巡のエリート選手だったからだ。

 ようやく17年にハイAで打率.293と結果を残し、 18年23歳で初めてメジャーキャンプに招待。19年は3Aでこれまでの鬱憤を晴らすような活躍をしている。それで行くと、契約金2万5000ドルの大家友和、6万7500ドルの多田野数人両投手は、決して高くない前評価から、それぞれ1年目、2年目でメジャー昇格を果たしたのだから、すごいことなのだ。

 球団側にすれば大変な掘り出し物で、獲得を進言したスカウトは鼻高々だっただろう。基本、アメリカではたっぷり練習を積ませるということはない。マイナーでも移動しながら(練習の間もなく)年間150試合前後を戦い、試合の結果で判断する。毎年、80人の選手を入れ替えようとすれば、それが一番手っ取り早いのだろう。よくマイナーのことをファームと呼ぶが、農場のような“のどかさ”はないのである。

文・写真=奥田秀樹

週刊ベースボール

最終更新:5/22(水) 16:40
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