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寝屋川中学生殺害事件・山田浩二死刑囚獄中手記2

5/21(火) 20:19配信

創

弁護士に渡された「被疑者ノート」

 署名指印をしたあと捜査員から、これから弁護士面会と言われました。「逮捕されてもう弁護士?」というのが一番の感想でした。身柄確保された瞬間、元カノ宅周辺に張り込んでいた捜査員や報道記者、大阪府警前の報道陣達、そして弁護士面会の段取りの良さ…まるですべてが想定内の対処で、こうなるのは必然的な流れなのか? と、悪い夢ならば上出来過ぎるので早く醒めて欲しいと思いました。そういえば寝不足気味だったな、どっかで居眠りをしているんだ…と自分に言い聞かせていました。けど残念ながら夢ではなかったのです。
 そして大阪府警の取調べ室から弁護士面会室に連行されて行きました。面会室には3人の弁護士の先生がいました。軽く自己紹介をしたあと何か説明をしてくれましたが、ほとんど憶えていません。憶えているのは「弁護方針として取調べでは黙秘をすること、雑談にも一切応じないこと」、そして「弁護士には嘘をつかないこと、弁護士にだけは正直に話をすること」それくらいです。
 そこでは「被疑者ノート」というのを渡されて「取り調べで何か言われた時はこのノートに書いて下さい。おおげさに書かずありのままを書いて下さい」と言われました。いきなりの弁護士面会で意味がわかりませんでしたが、こんなに早く3人の弁護士が来たというのは、よほど重大な状況なんだと理解し、とりあえず弁護士の指示に従おうと決めました。
 弁面終了後、いきなり取調べが始まりました。夜中の12時過ぎまで行われましたが、取調べでは顔を一切上にあげず、下を向いたまま黙っていました。捜査員の刑事(その時はまだ名前も知らない)から「しゃべった方が裁判の心証も良くなるぞ」「正直に話して死刑になるか、黙ってふてくされた態度で死刑になるのかどっちが良いのか」「話をしなかったら不利になる」「これから世間はお前を見ているぞ、正直になった方が印象も良くなる」みたいなことを言われました。
 弁解録取書の時の捜査員とは違う捜査員でしたが、その時とは180度私の態度が変わったこともあったのでしょう、時折、怒鳴られたり、脅迫的な言葉や強圧的なものの言い方をされ、身の危険を感じる程怖かったです。
 8月23日に検事調べの為、検察庁へ。そして8月24日には勾留請求の為、裁判所へそれぞれ行ってきましたが、いずれも弁護士の指示通り黙秘をしました。その為、この日、裁判所から接見禁止が付けられました。黙秘している以上は仕方無いかな…とは思いましたが、中途半端な形で身柄確保されたし、やり残してきた事もたくさんあるので、外部と連絡が取れない接禁はすごく辛かったです。

 いつまでも続くことはないかな? と思っていましたが、最終的には昨年、平成30年4月4日まで続きました。では何故その時期に接見禁止が解除になったのか説明します。前号の「獄中記」にも少し触れましたが2017年8月~2018年1月までの約4カ月半、精神鑑定の為、東京拘置所まで行ってきました。
 この期間は鑑定医の先生と面会をしないと鑑定にならないので「接見禁止の一部解除」という形で鑑定医の先生との面談を受けました。鑑定が終わって大阪拘置所に戻ってきましたが鑑定は終了したということで「一部解除」も取り消されて再び「接見禁止」が継続となりました。
 普通に考えると鑑定は終了しているので一部解除が取り消されるのは当然なのですが、その時にふと疑問を感じました。逮捕され、2年半以上経ち、公判前整理手続きでは公判に向け私の証言に対して少しずつ争点がしぼりこまれ、精神鑑定でも黙秘せず、弁護士に鑑定では正直に話すようにと言われてましたので正直に話をしています。鑑定での私の証言は公判前整理手続きの中でも争点として話題に出ているようですし、今更、接見禁止の理由である「罪証隠滅のおそれ」に意味や影響があるのだろうか?
 その理由に意味がないのなら接見禁止も無意味な物だし不必要だろう…と思い、ダメ元で弁護士の先生に接見禁止の解除を申し立てて欲しいと頼んだところ、意外にもあっけなく接見禁止の全面解除が認められたのです。それも私の誕生日である4月4日付で。
 最初は弁護士からは「接禁解除になるのは早くて公判が始まってから、下手すれば判決が出るまで接禁は続く」と言われていましたがこんな簡単に解除となるのならもっと早くから解除申請を申し立ててもらったら良かったと思いました。
 ただ、接禁解除となってから現在10カ月が過ぎましたが、いまだに弁護士以外では週に一度来てくださるカトリック教会の神父さん、そして報道記者やメディア関係者のみで、社会で交流のあった大切な人達の面会は両親を含め、まだ一度も叶っていません。面会があればあったで、第一審死刑判決、現在控訴中という身分として、面会に来てくれた人達にどのような顔をして顔を合わせればいいのか、面会室での再会後の第一声はどういう言葉を発せれば良いのかわかりません。
「迷惑かけてすいません」的謝罪がベストアンサーかもしれませんがいきなり謝罪するのは気まずい雰囲気になりそうだし、謝罪に関しては初公判の時にパフォーマンスなどと批判されて嫌な思いをしたので、いまだにそれがトラウマとなってます。なので最初は明るくふるまった方がいいのかなぁ…などと悩んでいます。
 この気持ちは相手も一緒なのかも知れない。仮に私が面会に行く立場の人間なら死刑判決で拘置所生活を送っている人に対してどうやってふるまえばいいのかわかりません。たとえそれが親しい相手や親族であっても、分かり合えた者であっても…。だから社会で交流のあった人たちが面会に来てくれないんだろうな、と思っています。

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最終更新:5/25(土) 15:40

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