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【インタビュー】菖蒲豊實(「人吉駅弁やまぐち」販売員・75歳)「駅弁のお陰で家族を食わせられましたけんね。駅弁には感謝しかないです」

5/21(火) 15:02配信

サライ.jp

【サライ・インタビュー】

菖蒲豊實さん
(しょうぶ・とよみ、「人吉駅弁やまぐち」販売員)
――JR 肥薩線人吉駅で、駅弁の立ち売りを半世紀――
「駅弁のお陰で家族を食わせられましたけんね。駅弁には感謝しかないです」

観光列車の発着時刻に合わせて人吉駅のホームに姿勢よく立つ。駅弁を満載した木箱の重量はざっと15kg。後ろの列車は特急「かわせみ・やませみ」号、右奥は「いさぶろう・しんぺい」号。

※この記事は『サライ』本誌2019年5月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。(取材・文/佐藤俊一 撮影/宮地 工)

──背筋が伸びて姿勢がいいですね。

「駅弁を売っているからでしょう。木箱に駅弁を入れ、背中からバンドをタスキ掛けにして支えながら、ホームを移動するじゃないですか。この木箱が結構、重たくてね。背筋をピンと伸ばして、反って持たんといけん。それがいつもクセになっているとです」(笑)

──駅弁を立ち売りして50年だそうですが。

「肥薩線の人吉駅(熊本県)で、駅弁の立ち売りを仕事にして、今年で
50年になります。私が勤める『人吉駅弁やまぐち』は人吉の駅前にあるんですけど、定年は55歳なんです。だから、先輩は皆さんもう辞められましたし、私も20年前に定年になるはずでした。でも、なぜか会社が“辞めろ”とは言わさらんけん、そのまま、今日まできてしまったんです」

──ホームで菖蒲さんは人気者ですね。

「長くやってますから、顔馴染みのお客さんが多くて。私が会社で休憩してると“菖蒲さんはどこにおる?”って、探しに来るとです。駅長さんからは“あまりの人気に嫉妬してます”なんて冗談を言われます(笑)。

鉄道ファンの方は、私の写真を撮って、送ってくれます。このごろは海外からのお客さんが増え、次々と私と並んで写真を撮っていきます。立ち売りが珍しいせいもあるとでしょうか。海外の方は、事前にインターネットでちゃんと調べてこられるんですよね。人気があるのは『栗めし』で、言葉がわからなくても、弁当を見て“これ!”って、買われて
いきます。こんなに外国からの人が多くなったのは、つい最近のことですけどね」

──立ち売りが残るのは人吉駅だけですか。

「全国では何名かおられるようですよ。この前、2月に大阪で駅弁大会があって参加したときは、北海道の旭川から若い女性が来てまして、私と立ち売りの共演をしました(笑)。

それから、岐阜県のJR高山本線美濃太田駅の『松茸の釜飯』や、福岡県のJR鹿児島本線折尾駅の『かしわめし』は立ち売りが残っていると聞いてます。北海道の函館本線森駅でも、夏の観光シーズンだけ『いかめし』の立ち売りがあるようです。だから、まだ4~5駅は立ち売りがあるんじゃないでしょうか」

──でも、50年ひと筋の人はいません。

「いないでしょうね(笑)。私が立ち売りの仕事に就いたのは昭和44年、25歳のときで、まだ移動手段は列車が全盛の時代です。自家用車を持ってる人なんて、あまりいなかった。列車は蒸気機関車が主体で、ディーゼルも走り始めていました。人吉駅に駅弁の立ち売りは4名いて、そのうちふたりが女性で、雑貨とかお菓子を売ってました。私は駅弁専門で、名物の『栗めし』と『鮎ずし』、それから『幕の内』の3種類を売ってました。いまは1100円の駅弁が200円のころです。

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最終更新:5/21(火) 15:30
サライ.jp

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