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日本のIT業界を自滅に追い込んだ、ITを知らない経営者たち

5/21(火) 7:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

世界的に過熱するAI開発競争。そのなかで日本のAI開発は周回遅れになっていると度々指摘されてきました。本連載は、囲碁AIの研究開発を行う福原智氏の著書『テクノロジー・ファースト』(朝日新聞出版)から一部を抜粋し、筆者が囲碁AI開発を続けるなかで感じた国内AI業界が抱える問題点について紹介していきます。今回は、日本のIT業界に内包する懸念点を考えていきます。

ITへの見識が浅い、中小IT企業の経営者

■悪い構造に加担する中小IT企業側

公共システム事業の課題を探っていくと、つい川の上流に責任を問いたくなる。けれども大きな組織や集合がはらむ問題では、どこか一箇所が悪いことはむしろ稀だ。特に多重下請け構造において受注者は発注者でもある。プレイヤー全員が何らかのかたちで問題に加担していると考えたほうがいい。

ITゼネコンの下請け構造を構成する中小企業には、ITにあまり詳しくない経営者がいる。多くは、2000年前後に新規参入し、ITバブルの波に乗っかろうとした経営者たちである。彼らはITに可能性を感じてこの世界に入ったわけではなく、単純にビジネスをしに来た。それゆえに自分自身はコンピュータの知識を必要としていない。日々何をしているのかというと、コネクションを広げたりトップ営業をしたりといった社長業をこなしている。利益さえあがれば、極端なまでに仕事の中身は関知しない。

そうした経営者にとって公共システム事業の下請けは実に良い仕事だ。

彼らは進んで下請け構造の末端に近い場所に身を置いた。新しい仕事がある度に人数の調整弁となって、スキルのあるなしを問わずスタッフをかき集めた。経験を持たない人でもとにかく雇った。50人のスタッフだけ集めて、マンションの1室でやっている会社もあった。頭数だけ揃えたら終わり。それだけで仕事の成果に関係なく給料が行き渡るし、上の会社も見かけは仕事をまわしているように見える。

するとどうだろう。進むのは時間だけでプロジェクトの工程ではなくなってしまう。2000年以降に発生した公共システムの構築失敗の背景には、こんな状況がいろんな現場で生まれていたためだと私は推測している。誰も良いとは思っていない。でも発注側と受注側の利益が一致しているので、下請け体制を変えるのは難しい。

しかし、変える方法はあるのだ。

たとえば開発の方法にアジャイル型開発というものがある。アジャイル型開発では仕様や設計の変更はあるものだという前提でおおよその仕様だけをつくり、細かくテストを繰り返して完成に近づける。開発期間中の前半から後半まで何度もテストをする。

対して従来のウォータフォール型では、企画、設計、実装の一つひとつの順番をしっかりこなし、最後にテストを行う。緻密に積み木を重ねていくようなスタイルなので、ちょっとでも変更があると、前に戻って丁寧に組み直していかないといけない。つまり柔軟性にかけてしまう。

二つをうまく使い分けトライ&エラーしていけばいい。より良く変える方法を探すのはITの力の発揮のしどころだ。それができないのは、「前例主義」「チャレンジするリスクをとらない」「失敗を許さない」「ベンチャーの可能性より、大手の安心感や信頼感」を求める意識が、日本社会に強いためだろう。

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最終更新:5/21(火) 7:00
幻冬舎ゴールドオンライン

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