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経済論争の的「MMT」は「トンデモ理論」に非ず

5/21(火) 6:15配信

JBpress

 (藤井 聡:京都大学大学院教授)

 今、MMT(現代貨幣理論)が話題だ。今アメリカで「ブーム」を巻き起こしている民主党の史上最年少議員アレクサンドリア・オカシオコルテス女史が、MMTを強烈に支持しつつ超大型の景気対策を主張したことがそのきっかけだ。

MMTを支持するアメリカ民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員

 しかし、ポール・クルーグマンやロバート・シラーなど、ノーベル賞を受賞した主流派経済学者たちがこのMMTに一斉に反発。それだけでも話題だったのだが、それに対して今度はステファニー・ケルトン教授を中心としたMMT論者達が、ひるむことなく徹底的に反発したことでMMTの話題はさらに拡大した。

■ 日米で話題騒然となったMMT

 こうした流れは、瞬く間に日本にも上陸した。

 とりわけ、MMTは、デフレ状況下では、デフレが終わるまでは財政赤字を拡大していくべきだと理論的に主張するものであるから、今年10月に予定されている消費増税の是非の議論を巡って、MMTはさらに話題となっている。MMTによれば、デフレ下の消費増税など論外だと瞬く間に結論付けられるからだ。

 そんな中、西田昌司参議院議員等が麻生財務大臣や安倍総理大臣にMMTについて質問を行うなど、その議論は国会にも飛び火した。一方で、消費税の推進を図る財務省は、審議会の中で、MMTを批判する海外の多数の経済学者達の声を何ページにもわたって掲載する等の強烈な反応を示したことで、さらにMMTが話題となっていった。

■ MMTとは何か? 

 こうしたMMTが話題になっていく中で、日本のメディアは、MMTを「異端」や「トンデモ」理論と紹介していった。例えば、2019年4月26日付けの朝日新聞では、「財政赤字なんか膨らんでもへっちゃらで、中央銀行に紙幣を刷らせれば財源はいくらでもある、というかなりの『トンデモ理論』」などと、ほぼ誹謗や中傷とも言い得るようなトーンで紹介しているのが、その典型だ。

 こうした批判は、学者もメディアもおおよそ、「MMTは、財政規律を破棄せよと主張しているが、そんなことすると、トンデモないことになる。財政には規律が必要なのは当たり前じゃないか!」というようなものが大半だ。

 しかし、この認識は、根本的に間違えた、完全なる誤解だ。

 そもそもMMTは決して、財政規律を「破棄せよ」と叫んでいるのではない。MMTはむしろ、財政規律を「改善せよ」と主張しているに過ぎない。

 今日の日本の財政は、「プライマリーバランス(基礎的な財政の収支)を黒字化しよう」という規律に基づいて運営されているが、実を言うと、この厳しすぎる規律のせいで、日本経済はいつまでもデフレなのであり、貧困と格差が広がり、経済が疲弊し続けているのが実態だ。それはまるで、過剰に厳しすぎる教育の下では子供たちの心身が歪んでしまう、と言ったような類の話だ。実際、安倍総理大臣も、「予算を半額(にすれば)・・・プライマリーバランスは黒字化する・・・しかし経済は最悪になる」(平成29年3月1日参議院予算委員会)と端的に発言している通りだ。だから、そんな規律は不条理なのであり、別の基準に改善すべきだ――とMMTは考えるのである。

 そしてMMTが新しい財政規律の基準として主張しているのが、「インフレ率」だ。

 そもそも、政府支出、あるいは、政府の赤字の多寡は、インフレ率に影響する。政府支出、ないしは赤字が拡大すれば大量の資金が民間に注入され、インフレ率が上昇する。そして、その逆もまた然りであり、それは先に紹介した安倍総理の答弁が示唆している通りだ。

 こうした点から、筆者は、MMTを政策論的な観点から、次のように定義している。

 【MMTの政策的定義】
 国債発行に基づく政府支出がインフレ率に影響するという事実を踏まえつつ、『税収』ではなく『インフレ率』に基づいて財政支出を調整すべきだという新たな財政規律を主張する経済理論。

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最終更新:6/10(月) 12:40
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