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米中貿易戦争は世界経済を揺るがしかねないレベルまで緊張が高まった

5/21(火) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

● 合意できなかった 米中の閣僚級の貿易協議

 5月9~10日、米国・ワシントンで開催された米中の閣僚級の貿易協議にて、両国は合意することができなかった。両国は交渉が建設的であり協議を継続すると表明しているものの、次回交渉の日程などは決まっていない。今回の交渉で、両国の溝の深さを浮き彫りにする結果となった。

 今後の展開について楽観は禁物だ。

 当初、合意間近とみられていた閣僚級の交渉が合意に至らなかったことは大きい。今後、米中はトップ同士の会談で妥結を図ることになるだろうが、交渉は一筋縄にはいきそうにない。特に、有力企業に対する政府の補助金の扱いなどは、中国にとって国家資本主義の根幹に関わる問題だ。そう簡単には譲歩するとは思えない。

 今回の交渉の経緯の背景には、中国、習近平国家主席の思惑があったとみられる。経済改革を重視する交渉責任者の劉鶴副首相は、米国に妥協案を示し合意にこぎつけたかったとの見方が有力だ。しかし、土壇場になって習近平国家主席は「全責任を取る」として、副首相の譲歩案をひっくり返したようだ。

 足元で中国経済が想定以上に減速し国内の不満が高まっているとみられ、習主席が米国に譲歩すると“弱腰”との批判が増える。批判や不満を回避し権力を維持するために、同氏はどうしても、対米交渉で強硬路線を取ることが必要になっているとみられる。

 これは、“国家資本主義”を重視し、補助金政策にこだわる中国国内の保守派の主張が、改革派を上回ったことを意味する。中国が、米国の求める補助金の削減などに応じることはできないだろう。

● 米中貿易戦争には 2つの側面

 米中の貿易戦争には、2つの側面がある。

 まず、米国は対中貿易赤字を削減したい。トランプ大統領はそれを有権者の支持獲得につなげたいのだ。

 2018年、米国の対中製品輸出額は約1200億ドルだった。一方、モノの輸入額は約5400億ドルに達した。数字を見ればわかる通り、制裁関税の発動余地という点では、米国に分がある。中国が同額の報復関税を発動することはできない。

 短期的に考えると、米国は対中輸入が多い分、制裁関税という圧力(脅し)をちらつかせ、相対的に有利に交渉を進めることができる。加えて、大統領選挙などの重要政治イベントを控え、米国の政治家が通商問題を持ち出すのは点数稼ぎの常とう手段だ。中国はそうした米国の事情をしっかりと理解し、米国から大豆などを購入することでトランプ大統領に譲歩した。

 もう1つ、米中の貿易戦争には、大国同士の“覇権争い”という側面がある。

 今後の経済、安全保障などにおいて決定的に重要と考えられるITの先端分野において、中国は競争力の向上を狙っている。中国は産業振興策である“中国製造2025”を推進し、5G通信システム等の分野での世界シェア奪取に向けて、積極的かつ大規模に補助金を支給してきた。補助金は、中国共産党主導による経済運営=国家資本主義の“キモ”だ。

 米国にとって、中国は安全保障上の脅威だ。IT先端分野の技術力は、今後の安全保障、軍事力に大きく影響する。シューマー上院院内総務がトランプ大統領に中国に強硬に迫るよう求めるなど、民主党には共和党以上に中国強硬論者がいる。大統領選を控え、民主党は、政権の対中強硬姿勢に関して使えるところは使い、経済への影響など批判する部分は徹底的にたたこうとするだろう。

 トランプ大統領は、第4弾の制裁関税の発動準備を進め、中国にさらなる圧力をかけ始めた。その狙いは、早めに対中交渉の落としどころを探ることにある。同氏は、大統領選挙に向けた論戦が本格化する前に米中交渉にめどをつけ、成果を世論に誇示したいはずだ。

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最終更新:5/21(火) 6:00
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