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【張本勲の“喝”】イチローには“一流”を“超一流”へ育てるために手腕を振るってほしい/張本勲コラム

5/22(水) 10:59配信

週刊ベースボールONLINE

 マリナーズの球団会長付特別補佐兼インストラクターに就任した。主に若手を指導するという。イチローの動体視力や瞬発力などはもって生まれたものだから、ほかの人がマネをしようと思っても簡単にマネができるものではないが、何度も書いているとおり、ことヒットを打つことに関し、イチローほどの技術を持った選手はメジャーを見渡してもいない。

 技術というものは、万人に共通する絶対的なものであり、イチローの大きな財産でもある。それを最大限に生かすために、メジャーの一流選手が、さらに超一流になるためにイチローと技術論をかわし、自らを高めていこうというならいい。しかし、まだイチローの技術の持つ価値も分からない、十分に準備のできていない若手選手のコーチをするというのはどうか。

 悪いと言っているわけではないが、若手への指導には、また別の技術や経験が必要になる。イチローにしても戸惑うことが多いはずだし、なによりもったいない。

 考えてみてほしい。長嶋茂雄さんや王貞治が巨人の現役をやめ、すぐに二軍のコーチをしていたら、どう思うだろう。

 もちろん選手たちはうれしいだろうし、素晴らしい指導をするとは思う。だが私は、彼らが磨き上げた技術を、もっと高いレベルを求め、超一流を目指す選手たちに伝えてこそ光るし、価値があると思うのだ。

 プロに入って間もない若手であっても、将来、超一流になれるだけの資質を持った選手はもちろんたくさんいる。それに関しては、まず基本の部分を監督の指示のもとでコーチたちが鍛え、その後で、イチローやONなどが、より高い技術を伝えていけばいい。

 以前も書いたが、イチローには日本球界への恩返しという意味も含め、日本の選手たちに技術を教えてほしいと思っていた。それも12球団の垣根を越えて、だ。春季キャンプならやりやすいだろうし、シーズン中でもいい。そこでイチローが持つ技術を、イチローから学びたいと思っている選手たちに伝える。

 選手からもまた多くの質問が出るはずだが、イチローがその疑問に自ら手本を示しながら説明する。若い選手たちの才能はみるみる開花していくはずだ。今までの球界ではなかったことだが、どう考えても悪い要素は何もない。

 私はそういう姿を見てみたいし、やるなら、どこであっても足を運ぶだろう。日本のコミッショナーから直々にお願いしてほしいとも思う。もしも、今後もメジャーで指導を続けていくなら、それこそ30球団の巡回コーチをしてほしい。

●張本勲(はりもと・いさお)
1940年6月19日生まれ。広島県出身。左投左打。広島・松本商高から大阪・浪華商高を経て59年に東映(のち日拓、日本ハム)へ入団して新人王に。61年に首位打者に輝き、以降も広角に打ち分けるスプレー打法で安打を量産。長打力と俊足を兼ね備えた安打製造機として7度の首位打者に輝く。76年に巨人へ移籍して長嶋茂雄監督の初優勝に貢献。80年にロッテへ移籍し、翌81年限りで引退。通算3085安打をはじめ数々の史上最多記録を打ち立てた。90年野球殿堂入り。現役時代の通算成績は2752試合、3085安打、504本塁打、1676打点、319盗塁、打率.319

写真=Getty Images

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最終更新:6/14(金) 10:57
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