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日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に支払われている

5/22(水) 16:02配信

ニューズウィーク日本版

<企業が抱える人件費コストの内訳を見てみれば、年功賃金・終身雇用といった日本の雇用慣行が限界に達していることがわかる>

経団連会長とトヨタ社長が「終身雇用制を維持するのは難しい」という趣旨の発言をし、注目を集めている。グローバル化が進むなかでコスト競争に勝てないからだ。

日本企業の年齢層別の所得グラフを見る

企業にとって最大のコストは人件費だが、従業員の人数的に多い団塊ジュニアの世代が中高年期に達している。年功賃金で給与も上がっているので、トータルの人件費が重みを増している。これに耐えかねて、富士通やNECといった大企業も、45歳以上の中高年のリストラを始めている。

40代後半の正規職員は全国に471万人ほどいる。彼らが手にした所得の総額を度数分布表から計算すると、25兆6909億円となる(総務省『就業構造基本調査』2017年)。同じやり方で年齢層別の正社員の所得総額を算出し、合算すると<表1>のようになる。

<表1>

全年齢層の合計は157兆8143億円となる。全国の正社員が手にした所得のトータルで、企業にすれば支払った人件費の総額に当たる。年齢別の内訳をみると、40~50代前半の部分が膨らんでいる。全体の46.4%だ。正社員の給与の半分近くはこの年齢層に支払われていることが分かる。

年功賃金であるうえ、世代的に人数が多いものだから、こういうことになっている。これでは企業も立ちいかなくなるだろう。

いよいよ、年功賃金・終身雇用という慣行も限界に達しつつある。城繁幸氏の言葉でいうとこれは「人間の価値は年齢で決まる」システムで、給与は年齢に応じて機械的に上がり、かつ定年までいられる。高度経済成長期のようなピラミッド型の人口構成ならまだしも、上が厚く下が細い「逆ピラミッド」の社会ではこれを維持するのは難しい。

今後の日本では、雇用の流動性は高まっていくだろう。だが海外では、それがスタンダードだ。45~54歳男性に今の勤め先で働き始めた年齢を問うと、アメリカでは半分以上が「40歳以降」と答えている(OECD「PIACC 2012」)。

雇用の流動性がもっと高い国もある。「40歳以降」という回答比率が高い順に、OECD加盟の25カ国を並べると<図1>のようになる。

<図1>

アラフィフ男性に今の会社で働き始めた年齢を尋ねた結果だが、国によって大きく異なっている。ニュージーランド、エストニア、デンマークでは6割が「40歳以上」と回答している。今の会社の在籍期間がほんの数年という人たちだ。組織を移った回数は5回、10回というのがザラだろう。

アメリカは中間くらいで、日本は最下位に位置している。アラフィフ男性の6割が、20代(新卒)で入った会社に勤め続けている。今から7年前のデータだが、雇用の流動性が最も低い社会だ。

諸外国では、「高い給与が得られる」「自分の専門性が活かせる」という理由で、労働者は職場を頻繁に移る。しかし日本では長く勤めるのがよしとされ、転々と色々な所を渡り歩く人は「耐性がない」と低く見られる。転職(場)がキャリアップにはならない社会だ。

雇用の流動性が高まるのは悪いことではない。日本固有の職域の病理(パワハラ、転勤強制等)を改善させるきっかけにもなるだろう。一つの組織にずっと「しがみつく」生き方はリスクが高い。

しかし、不当解雇がまかり通ることになってはならない。企業は利益追求と同時に、社員の生活保障の機能が期待される。有能な人材を獲得する上でも、企業にはよりいっそう「社会性」が求められるようになる。

<資料:総務省『就業構造基本調査』2017年、
    OECD「PIACC 2012」>

舞田敏彦(教育社会学者)

最終更新:5/22(水) 16:02
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