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ホオジロザメの遺伝子解析で、その優れた治癒能力の秘密が見えてきた

5/22(水) 12:15配信

WIRED.jp

“HPを全回復”できる能力をもつ?

そのひとつに、サメの優れた治癒能力に関する研究がある。例えば、噛まれたり傷ついたりして深刻な外傷を負ったサメが、数カ月後には完治したという話が何十年もの間、漁師や海洋生物学者たちの間で語り継がれてきた。ツマグロという種類のサメに関する最新の研究では、数週間、ときにたった数日で傷を治せるほどの著しい回復力があることが判明している。

ホオジロザメの新しいゲノム地図は、ゲームでいう「HP全回復」の赤い薬のような能力を、いかに獲得したかを明らかにしている。世界の危険な海で何百万年という生存競争を繰り広げてきた結果、遺伝子は微調整されていった。そして、強力な血液凝固因子をコードするDNA配列や、新しい肉体の基礎的要素となる足場タンパク質など、傷を治すいくつかの重要なプロセスに影響を与えたのだ。

ホオジロザメは独自に順応した遺伝子をもっており、その数はほかのどの脊椎動物よりも多いようだ。「ホオジロザメのほとんどのゲノムは傷の治癒のためにあります」と、スタンホープは言う。それは、ホオジロザメが食物連鎖の頂点に君臨するようになったのが、長い進化の歴史におけるごく最近の出来事であることを示唆している。

天敵のいないホオジロザメの寿命は、一般的に75年程度とされる。巨大なサイズと長い寿命から数学的に考えれば、どちらも突然変異につながりやすいこともあって、がんを発症しやすくなるはずだ。

一方で研究者たちは、象やクジラといった長寿で体の大きな種のがんの発症率が、人間とさして変わらないことを以前にも増して認識している。生物学者は、これを「ピートのパラドックス」と呼ぶ。ゲノム解析の結果を研究したところによると、この抗がん性という優れた能力は、遺伝情報の完全性を保護するゲノム安定性をもつ遺伝子集団に由来するようだ。

サメの“保護”が、ゲノムの謎を解く鍵になる

スタンホープとシヴジによる新しいゲノム地図からは、ゲノム安定性に基づく傷の修復メカニズムや腫瘍の抑制につながる遺伝子コードを、ホオジロザメが大量にもっていることが明らかになった。はるか昔に進化を遂げ、生命の樹において人間と遠く離れた種であるがゆえに、サメの遺伝子はまったく新しい抗がん作用を示すかもしれない。

野生のサメのがんの発症率には不明な点が多いことから、研究者らはこの仮説をラボで検証する。ゲノム安定性をもつサメの遺伝子をマウスに移植して発がん性物質にさらすことで、サメのDNAがもつ“防御力”を測定する計画だ。「これらの生物の遺伝子によって、がんはどれだけ抑制されているのか。その可能性を理解することで、人間に大きな恩恵がもたらされるかもしれません」と、スタンホープは言う。

一方で、がんの有効な治療薬や人間の傷を治す新しい手段へと結びつけるには、何年もの努力が必要であることも強調している。サメ由来の食品などを摂取したところで、その優れた力を得ることはできない。「サメを食べることでがんにならない可能性は、サメを食べて速く泳げるようになるのと同じくらい不可能でしょうね」

ところが、こうした誤った情報を流す人々によって違法な漁業が助長され、毎年推定1億匹ものサメが殺されている。ひれを切り落とされて海に戻されたサメは、波にもまれながら死んでいくのだ。

スタンホープとシヴジは、自分たちの研究によってサメにスポットライトが当たり、人々が“消費”するのではなく保護する方向へと進むことを願っている。地球の海を泳ぐサメは500種以上いるが、ホオジロザメはゲノム配列を解読できた2番目のサメにすぎない。解読されるのを待っているDNAにどれだけ多くの謎が潜んでいるのかは、誰にもわからないのだ。

MEGAN MOLTENI

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最終更新:5/22(水) 12:15
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