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「うつのトンネルには必ず出口がある」──『うつヌケ』著者・田中圭一インタビュー(前篇)

5/22(水) 20:11配信

GQ JAPAN

『うつヌケ』が大ヒットした漫画家・田中圭一さんに、うつ病と向き合う方法を聞いた。その前篇をお届けする。

【うつを克服するのに田中圭一が試したこととは?】

漫画家・田中圭一さんによる、うつ病からの脱出を描いたドキュメンタリー漫画『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)が、発行部数34万部を超える大ヒット。2017年度には「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされ、「うつヌケ」という言葉は個人の体験談を超えて社会的なトピックとしても共有されることになりました。

田中さんは、デビュー当時からサラリーマンとの二足のわらじを続ける「兼業漫画家」として知られていますが、田中さんが自分のうつに気づいたのは、ゲームソフト会社の営業マンとして働いている時でした。そこから10年近く暗く長いトンネルをさまよい続け、2014年10月、ようやくそこからの脱出に成功します。その経験をもとに、16人の「うつヌケ」体験者へのインタビューを漫画化したのがこの作品です。

うつ病をいかに克服し、その後も向き合ってきたのか。メンタルヘルスがやられがちな5月のなかば、田中さんにじっくりとお話を聞きました。

読者からの反応は?

──『うつヌケ』は、2014年12月から、デジタル小説誌の『文芸カドカワ』とウェブサービス「note」にて同時に連載が始まりました。連載中から反響が大きかったと思いますが、読者の感想で印象的だったものはありますか?

田中:これは単行本になってからの話ですが、いちばん嬉しかったのは、うつを患う女性からの言葉ですね。「夫が自分の病気のことを全然理解してくれない」と悩んでいた時、この『うつヌケ』を渡したそうなのですが、それを読んだ夫が「あなたはこんなふうに苦しんでいたんだね」と理解してくれた、というものです。これは、目に見えない「うつ」という病気をビジュアライズしたひとつの成果だと思いました。

うつの体験談を単にマンガにしても、うつ病の人は共感してくれるかもしれないけど、そうじゃない人にはなにも伝わらないと思ったんです。だから「うつ」をキャラクター化して、調子が悪くなるとスライムみたいな白くてまるっこいやつがワラワラと集まってきたり、ドス黒いのが上から落ちてきたり……うつが抜けていく時にはそいつらが飛んでいってしまったりと、漫画家ならではの発想でかたちにしました。「カネコくん」という、うつとは無縁のアシスタント・キャラクターを登場させたのもひとつの工夫でしたね。

その一方で、もちろんマイナスの反応もありました。まず、この本のなかで取り上げている事例には、仕事も社会的地位もあって、家族に恵まれているという人が多かった。それに対して、「なににも恵まれていない自分はどうしたらいいのか」「学生や若い人は救わなくていいのか」という批判があったんです。

ただ、この本は、「これを読めばうつが絶対に治ります!」というものではありません。自分を含めて17人17通りの「うつヌケ」のケースを紹介し、それを読んだ誰かがうつから抜け出すきっかけにしてくれれば、という思いで描きました。そのなかで、もちろんそこからこぼれてしまう人もいるでしょう。ただ僕がいちばん伝えたかったのは「うつのトンネルにはきっと出口があるし、出てきた人がいるよ」ということだったんです。

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最終更新:5/23(木) 13:45
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