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「うつのトンネルには必ず出口がある」──『うつヌケ』著者・田中圭一インタビュー(前篇)

5/22(水) 20:11配信

GQ JAPAN

うつをヌケるきっかけ

──10 年ものあいだ辛い時期を過ごされた田中さんですが、『うつヌケ』にも描かれているように、そのトンネルを抜けるきっかけは「自分を好きになること」が重要だと気づいたことでした。それはコンビニでふと手にとった1冊の本が教えてくれたのだとか。

田中:うつを患って最初のころは、この病気は薬を飲んで治るものだと思っていたんです。ただその期間が長引いていくほど、薬は一時的に落ち込むのを支えるだけで、完全に治すためのものではないのだと気づいてしまった。そこで、自分でどうにか抜け出す手立てがないかと考えたんです。

僕がたまたま手に取った本は、うつを独自の方法で克服した精神科医の方が書いたものだったのですが(宮島賢也『自分の「うつ」を治した精神科医の方法』河出書房新社)、そこには「朝起き抜けに自分をほめよう。自分を好きになろう」とありました。最初はさすがに「そんなアホな!」と思いましたよ(笑)。

たとえば、つらい会議や難しい商談があるという朝、目覚めてすぐにそのことが頭に浮かんで1日中憂鬱になる、という経験がみなさんにもあると思います。僕が営業マンだった時代には、ノルマを達成しなければ!というプレッシャーのある月末は本当に気分が落ち込みました。

その本に書いてあったのは、朝起きた瞬間というのは脳みそがぼやけた状態なので、最初に脳に浮かんだ言葉や発した言葉が心の底まで入ってしまいやすいと。つまり、潜在意識と顕在意識の境目が曖昧な状態の時に、自分を鼓舞するような前向きな発言を心に入れてやろうということでした。騙されたと思って続けてみると、3週間経ったころに本当に気持ちが明るくなってきたんです。

自分で自分に催眠術をかけるみたいなものですよね。気持ちが明るくなると行動ができるようになり、その行動が良いことを生み、それがハッピーな状況を作る。簡単なことですが、馬鹿にできないものです。

記録することの重要性

──そうして、うつのトンネルを抜けたと思われた田中さんを待っていたのは、本のなかでは“突然リターン”と名付けられている「うつのぶり返し」でした。その原因を追求するなかで、大きな発見があったわけですね。

田中:僕はうつのなにがいちばん怖かったかというと、“原因不明の不安感”なんです。だから、なんとしてでも気分が落ち込む時の共通項を見つけたかった。そこから日記のように、その日の気温と「すごく辛い/やや辛い/普通」という気分の評価をエクセルでつけはじめました。

記録をつけはじめて何カ月か経ったある日、気分が落ち込むのが3月、5月、11月だということに気がついた。それを気温と照らし合わせた時に、初めて僕のうつが悪化する原因が「はげしい気温差」だと判明したんです。このからくりを発見したことで、一気に目の前の靄が晴れた気がしました。

うつを克服したいまでも、とくに気温差の大きい3月、5月には気持ちが落ちることがあるんです。だけどそれは気温差があるからだし、6月、7月には元気になるのは確定している。そこを信じられるかどうかが大きかったですね。


《後篇につづく》


田中圭一(たなか けいいち)
PROFILE
1962年5月4日生まれ。大阪府出身。手塚治虫タッチのパロディマンガ『神罰』がヒット。著名作家の絵柄を真似た下ネタギャグを得意とする。また、デビュー当時からサラリーマンを兼業する「二足のわらじ漫画家」としても有名。現在は京都精華大学 マンガ学部 マンガ学科新世代マンガコースで専任准教授を務めながら、株式会社BookLiveにも勤務している。

聞き手・斎藤宣彦 文・横山芙美(GQ)

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最終更新:5/23(木) 13:45
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