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ドレスコーズ・志磨遼平の創作論「罪深い人の罪深い作品に僕らは共感する」

5/22(水) 21:15配信

Rolling Stone Japan

ドレスコーズ・志磨遼平は「奇才」という言葉が似合うミュージシャンだ。そんなドレスコーズの新作『ジャズ』は、なんと人類の滅亡がテーマのアルバム。圧倒的な問題作『ジャズ』に込めたメッセージを志磨に聞いた。

写真2点:ドレスコーズ・志磨遼平の創作論「罪深い人の罪深い作品に僕らは共感する」

―今回も衝撃的な作品を作りましたね。こうした作品はもちろん売れてほしいですが、残るでしょうねこの『ジャズ』というアルバムは。

それはうれしいですね。残ることが前提のコンセプトなんで。

―さて、今作『ジャズ』は“人類が滅ぶ時は一瞬ではなく、穏やかなものかもしれない”と気づいたところから制作がスタートしたと資料にありましたが、普通そんなことは気づかないと思うんです。そのインスパイアどこから来たのですか? 確かアルバム『平凡』の時は杉本博司さんの「ロスト・ヒューマン」という展示からインスパイアされたと言っていた記憶があります。

人類滅亡のシナリオを何十パターンも並べたインスタレーションみたいな展示ですね。確かに『平凡』の制作時に観て驚いた覚えがあります。それで言うと今回は、去年音楽監督を務めた『三文オペラ』かもしれませんね。演劇自体、観に行くことはあったんですが、作ること、つまりお芝居の内側に入ることは初めてだったので、すごく影響されて。稽古場にもほぼ毎日通って……音楽監督ってそんなにやることないんですけど(笑)。稽古から上演の3カ月間、すごく贅沢な経験をたくさんできまして。

―ええ。

面白かったのが、お稽古で演出家が「あそこのシーンをやってみましょう。はい!」って手を叩くと、役者さんは突然、別の人になるわけじゃないですか。で、どこかでまた「はい!」って手を叩くと、みんなフッと憑き物が落ちたみたいに素に戻る。演出家が手を叩くたびに皆の人格がポンポン入れ替わる。あと、お芝居の最中にお客さんをイジったりすることを“ひらく”って言うんですけど、舞台と客席のあいだに透明の幕があると仮定してそれをひらいたり閉じたりするイメージですよね。そうやって“ひらいて”いる間は、役者さんは『三文オペラ』の18世紀の時空と、実際の劇場の時空のはざまに存在していることになる。

二つの時空に片足ずつ突っ込んでるような状態、というか。そういった人格や空間の「境界線のあいまいさ」がすごくおもしろくて。で、お芝居が終わってすごく寂しかったのは、カンパニーにいた役者のみんなにはまた会えても、あの時のあの役の人格には、舞台の再演でもない限りもう二度と会えないんだなって考えた時に、これはちょっとした“死”だなと思ったんです。肉体に宿っていた役が抜けるって、構造としては死だなと。つまり、劇場では小さな死が毎日繰り返されているわけです。で、そういう「死」みたいなものをテーマにアルバムを作ってみようと最初は思ったんです。

―志磨さんらしい発想ですね。

で、死についていろいろ考えてたんですよ、毎日(笑)。だから友達とかによく心配されましたけど(笑)。「大丈夫?」みたいな。でも、別に何かがつらくて死を考えてるわけじゃないんで。人の存在しているか・していないかみたいな、そういう淡いみたいなのに今すごく興味がありますっていうだけなので。そういうことを考えたり、本などを読んだりしているうちに、自分たちの「滅びかた」みたいなものが、何となく見えてきたんです。で、最終的には人類の滅びかたがテーマになったんです。けど、取っ掛かりは演劇ですね。

―なるほど。そこまでは理解できました。で、“人類の滅亡”がなぜ“ジャズ”とリンクするんですか?

jazzという言葉の語源って意外とはっきりしてないらしくて。例えばsexという意味の黒人さんのスラングとして最初にjassという言葉が生まれたっていう話もあります。で、sexを商売にする売春宿が「jass house」で、そこでムードを高める音楽を演奏するバンドを「jass band」って呼んでたとか。

―へぇ。

それとはまた別に、jazzには「中身がなくて騒がしいだけ」っていう意味もあったらしいんです。だから我々が好きなロックだとかパンクだとかもjazzと呼んでいいってことになる。「から騒ぎ」みたいな意味ですよね。実際、1920~1930年代というアメリカの黄金時代のことを、作家のフィッツジェラルドが「Jazz Age」と呼んだんです。つまり“中身がなくてただ騒がしいだけの時代”みたいな意味です。その「jazz」って言葉の本来の意味が、僕が今回やろうとした人類の隆盛と衰退の物語にぴったりな感じがしたんですね。別に何も残さず、ただ大騒ぎしていなくなる。そういうから騒ぎの人類の物語っていう意味で「ジャズ」ですね。

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最終更新:5/22(水) 21:15
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