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「頑固な腰痛はヘルニア、狭窄のせい」という医師の説明は信用できるか

5/22(水) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 慢性的な腰痛で医療機関を受診した際、X線やMRIの画像などを見せられて、医師にヘルニアや狭窄を指摘され、手術を強く勧められることがしばしばある。それは本当に正しいのだろうか。慢性痛の専門医らは、こうした診断や手術について「多くは医師の勉強不足によるもの」と否定する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

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● 神経を圧迫されても 痛みが起きることはない

 「椎間板ヘルニアですね、手術しましょう」

 「脊柱管狭窄症です。そんなにつらいなら、手術してあげましょうか」

 延々と治らない耐えがたい腰痛に対して、ほとんどの患者が整形外科医から告げられるのはそんな病名と治療法だろう。(ほか、腰椎すべり症、坐骨神経痛、骨の変形もポピュラー!)痛みが辛いほど、痛みが長引いているほど、「先生、手術をお願いします」となるわけだが、お勧めできない。

 なぜなら、その痛みが最初の診断を受けてから3ヵ月以上も続いているようなら、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症のせいではないからだ。

 「ヘルニアや狭くなった脊柱管が神経を圧迫するせいで腰痛が生じている、という説明を真に受けてはいけない」

 そう断言するのは、腰痛をはじめとする慢性痛の名医として名高い、加茂整形外科医院(石川県・小松市)の加茂淳院長だ。JR小松駅から車で10分ほどのところにある医院には、難治性の慢性痛に苦しむ患者が全国から訪れ、これまでに治してきた患者は7万人を超える。

 「95年に国際腰痛学会が出した論文によると、腰痛がまったくない人でもMRIを撮ると76%に椎間板ヘルニアが見つかり、逆にヘルニアがある人でも8割は、まったく痛みを感じていないことが分かっています。同様に脊柱管狭窄も、高齢になると70%に見られますが、痛みを感じない人は大勢います」

 加茂院長は「痛みというのは通常、神経線維の先端についている痛みセンサーがキャッチする。神経の途中で痛みが発生したり、感知されたりすることはない。ちなみに神経は、かなりの圧迫に耐えられるようにできています。例えば足の裏はいつも体重の圧迫を受けていますが、それで足の裏の神経がおかしくなるということはありません」と言う。

 つまり、ヘルニアや狭まった脊柱管で圧迫されたぐらいでは、神経に痛みが起きることはない――。

 これ、かなりショックな事実なのではないだろうか。

 にわかには信じがたく、「眉唾」のように感じるかもしれないが、実際、海外では、椎間板ヘルニアの手術はほとんど行われなくなっており、厚労省のワーキンググループが2018年に出した『慢性疼痛治療ガイドライン』にも「手術」の項目はない。

 それなのになぜ、治療の切り札のごとく行われ続けるのか――。

 「日本の慢性痛医療は海外の先進国と比べ、20年以上遅れている」と横浜市大ペインクリニックの北原雅樹診療教授も嘆く。

 整形外科や脊椎外科では、慢性的な腰痛や下肢痛はあくまでも椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、あるいはすべり症などの構造異常が原因で、それらを手術して治せば、痛みも消えると考えているらしい。

 「現在、日本の一般的な整形外科医が慢性痛の患者さんに対して行っているのは、科学ではなく、先輩医からの“言い伝え”に従った治療法です。1980年代中頃以前の医学。上からの指示に平身低頭して従う『御意』体質の産物ですよ」(加茂院長)

 ◎参考資料
以下はヨーロッパのガイドライン。「牽引」から下、エビデンス(科学的根拠)の低い、効果が認められない治療法と判定された中には、現在も日本の整形外科で普通に行われている治療法が並んでいる。

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最終更新:5/22(水) 8:25
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