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銀行・証券の「ノルマ廃止」を信用するな

5/22(水) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

● 「ノルマ」はやっぱりあったのか!

 大手金融機関が投資信託や保険などの個人向け営業に関して、支店や個々の社員に販売目標を割り振る、いわゆる「ノルマ」を4月から廃止したと報じられている。

 例えば、三井住友銀行は支店単位の販売目標の設定をやめ、支店長が個々の行員に対して目標を割り振る行為を禁止するという。また、三菱UFJ銀行はすでに行員の評価を顧客の資産残高を中心とするものに変えているという。

 大手証券会社も、大和証券は2017年4月にノルマを廃止し、野村證券も営業担当者の成果について、顧客の預かり資産の増減や、新規資金の獲得額などの指標で評価するようになっている。野村にあっては、販売手数料収入が見込める商品で「ノルマ営業」をしていたころに比べると、個人向けの営業部門の収益力が落ちたという(「日本経済新聞」5月21日)。

 これらの報道は事実なのだろう。ノルマに基づく無理な販売がなくなるなら、顧客にとっても、金融機関の個人営業担当者にとっても望ましいことのように思われる。しかし、少々わざとらしいかもしれないが、ひとつ改めて驚いておくことにしよう。

 「最近やめたということは、やっぱりノルマはあったのだ!」

 読者は、これまでにこれらの金融機関から、例えば投資信託の乗り換え勧誘の営業などを受けたことはなかったか。それが、主として社内のノルマに基づく、会社と社員の都合によるものだったとすると、どのような気持ちだろうか。

 「ノルマがなくなったのなら、安心してお付き合いができる」と喜ぶのは、いささか人が良すぎるというものだろう。

● 「ノルマ」が「忖度」に変質するだけ

 大手金融機関の個人営業に関するノルマ廃止については、3段階くらいに分けて検討する必要があると思われる。

 第1段階として、(1)ノルマ廃止は有効に行われるのか、(2)ノルマ廃止が有効に行われたら金融機関側に何が起こるのか、(3)ノルマがなくなれば顧客にとって好ましい状態になるのか、(4)結局個人はどうしたらいいのか、といった点を考えたい。

 まず、程度には差が出るかもしれないが、大筋の問題としてノルマ廃止は有効に機能しない可能性が大きいのではないか。金融商品の販売による手数料が金融機関にとって収益源であることは間違いないのだから、個人営業を担当する社員はやはり手数料を稼ごうとするだろうし、営業担当者を評価する上司は、働きぶりを総合的に評価する中で手数料の稼ぎぶりを評価に組み込むだろう。つまり、大っぴらな「ノルマ」が、表面に出ない「忖度」に変わるだけなのではないか。

 営業担当者はこれまでよりもコンプライアンスに注意して、短期間の投資信託の乗り換えのようなケースでは「顧客側の判断と希望による」ことの証明を丁寧に行うだろうし、売買回数で手数料を稼ぐよりも預かり資産残高を重視するようにはなるかもしれない。それでも売買手数料も「稼ぎ」であることに変わりはない。

 金融機関の意図として、ノルマの廃止は、顧客のためというよりは、金融庁の意向に沿うためという意味が強いのではないかと思われる。しかし、金融庁は職場での目標の与え方や人事評価といった、表面的に取り繕うことができる仕組みの変更に期待しすぎているのではないだろうか。官僚も銀行員も、人事が大事な人たちだが、後者は営利企業であり収益という裏の正義がある。

 販売手数料稼ぎを目的とした投信の乗り換え的な勧誘が好ましくないのだとしたら、投信を全てノーロード(販売手数料ゼロ)にした上で、説明・コンサルティング・助言・資料代などを運用商品そのものからアンバンドリング(分離)し、金融機関にそれぞれ値付けさせるようにしたらいいのではないか。目論見書の印刷にもお金が掛かるし、営業担当者の説明やコンサルティングにも人件費その他の費用が掛かるので、これらに対して顧客に対価を請求することは正当だ。顧客の側が「価値あり」と認めるならお金を払うだろう。サービス代を商品の価格に乗せてこっそり(かつ「ごっそり!」)稼ごうとしないほうがいい。

 なお、保険のかたちを取る運用商品に関しては、消費者保護上も早急に手数料の内訳を投資信託並みに開示させるべきだ。

 監督官庁としても、実効性の乏しい目標・評価体系の指導に無駄な時間と手間を費やすよりも、ビジネスの仕組みを改めさせる方が賢いのではないか。

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最終更新:5/22(水) 6:01
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