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「不治の病」は、いつ告知されるべきか? 早期診断技術の進化が生んだ倫理的ジレンマ

5/23(木) 12:17配信

WIRED.jp

ギリシャ神話のなかで、トロイアの王女カサンドラが授かった予知能力は呪いだった。彼女が予言したことは、すべて現実になったのだ。その問題は、誰も聞く耳をもたなかったことにある。

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高精度の遺伝子検査が行われるいま、現代科学はこの古代神話に危険なほど接近しつつある。もしあなたが不治の病を患っているとしたら、いつその事実を知りたいだろうか? 

未来のネガティヴなできごとについて知るという選択肢があるとき、9割の人々は知らないままでいることを選ぶ──。そんな調査結果が、スペインのグラナダ大学とドイツのマックス・プランク研究所の共同研究チームにより明らかになった。研究チームはこの現象を「カサンドラの後悔」と呼ぶ。

アルツハイマーを巡る「カサンドラの後悔」

カサンドラの後悔は、まもなく身近で悩ましい現象になるかもしれない。2019年2月に学術誌『Nature Medicine』に掲載された、アルツハイマー病の早期診断の可能性をひらく論文を見てみよう。国際研究チームは、ある種の血液たんぱく質の有無により、各個人が16年後にアルツハイマー病を発症する可能性を推定できると報告している。

しかし、こうした画期的発見は新たな火種になるかもしれない。人々は、いまだ治療法のない神経変性疾患を発症するリスクを知りたいと思うだろうか?

ケンブリッジ大学で医学と倫理に関する研究を行う社会学者のリチャード・ミルンは、「発症予測に関連する疑問、なかでも知る権利と知らずにいる権利については、すでに遺伝子検査に関する議論のなかで浮上しています」と指摘する。

「倫理的観点からの最大の懸念は、多くの人々がこうした情報を知りたいと思っており、将来の計画を立てる上で有用だとみなしている反面、情報がその人にとって害にもなりうることです。というのも、予防する手立てのない病気について高リスクだと伝える事態が想定されますし、こうした予測そのものが現段階では不確実なのです」

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最終更新:5/23(木) 12:17
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