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ボロボロになるまで戦い続けた、上原浩治の清々しい引退会見

5/23(木) 10:30配信

GOETHE

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!

「朝起きた時に、肘が、肩が、ハムストリングスが、腰が、とかを気にしなくていいんだなと思いました」ーーーシーズン途中での引退を発表した読売巨人軍の上原浩治投手

また一人、球界のレジェンドがグラウンドを去った。メジャーリーグでも活躍した読売巨人軍の上原浩治投手が引退を発表した。200人を超える記者が集まった引退会見では、「ケガばっかりの中途半端な」野球人生だったと振り返りながらも「手を抜いて投げたことはないですし(中略)、抜いて練習したことは一切なかった」と胸を張った。

プロフェッショナルとしての意識が高く、現役時代はビールは缶1本だけと決めていたという。

「ビール3本、4本飲んでも大丈夫だなという気持ちになると思いますし、朝起きた時に、肘が、肩が、ハムストリングスが、腰が、とかを気にしなくていいんだなと思いました」

44歳、20年にわたるプロ野球人生で体は悲鳴をあげていた。昨年オフにも膝を手術、再起を目指したが、自らが納得できる投球を取り戻すことはできなかった。ボロボロになった体でも、やれるという自信があったからこそ、現役続行の道を選んだ。それを自らの力で証明できなかったことに悔しさも残るだろう。

ボストンレッドソックス時代、リーグ優勝決定シリーズでMVPに輝いたときは、ユニフォーム姿の息子とともにインタビューを受けて、大きな話題となった。

「(家族に引退を伝えた際に)子どもはお疲れ様とは言わなかったですね。半分アメリカ人はいっているので、コングラッチュレーションと言われました」

日本一になり、世界一になり、日米通算で100勝100セーブ100ホールドという大記録も樹立した。高校時代は補欠、浪人生活を経て、大学卒業後にプロ入り。自らを“雑草“と呼んだ男は、球界で大きな花を咲かせた。自分で引退を決めることができるのは、限られた選手だけだ。そこのことひとつだけをとっても幸せな野球人生だったといえるのではないだろうか。

涙あり、笑いあり。会見での彼の表情は、すべてをやりきった人間が持つ清々しさを感じさせた。ボロボロになれるまで自分を追い込める人間だからこそ、たどり着ける境地がある。きっとそれは、野球だけ、スポーツだけの話ではない。自分は自分を追い込めているだろうか。上原浩治の美しい引退を見て、そんなふうに己の人生を振り返らずにいられなかった。


Text=星野三千雄 Photograph=Getty Images

最終更新:5/23(木) 10:30
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