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速く走るならMTよりAT! レーシングドライバーが語るイマドキATの完成度と最強の2ペダルとは

5/23(木) 18:02配信

WEB CARTOP

F1やスーパーGTもパドルシフトが増えてAT化に近づいている

 何度も書いてきたが、僕自身はどちらかというとAT(オートマチックトランスミッション)派だ。3ペダルのMT(マニュアルトランスミッション)車のほうがスポーティだというのが世の一般的な考え方だが、そうは思わない。

【写真】レーシングドライバーも認めたAT搭載のスポーツカー

 たとえばハイスピードでコーナリングしながらシフトチェンジが必要になった場合、MTだと左足をフットレストから外してクラッチペダルを操作し、ステアリングからは片手を離してシフトレバーを操作しなければならない。サーキット走行など高速走行時に正確にライントレースしながらシフト操作するには、バケットシートに5点式以上のシートベルトで身体をガッチリ固定していなければならない。普通乗用車の快適なシートにゆるゆるの3点式シートベルト装着状態で、正確なライントレースとシフト操作を両立するのはかなり無理があるのだ。

 近年のレーシングカーは速い上級カテゴリーになるほど2ペダルのステアリングパドルが当たり前。スーパーGTマシンもF1もWRCのラリーマシンだって2ペダル化されている。ただこれらはATではない。ギヤ選択はパドル操作でドライバーがマニュアル操作するという意味では、MTに分類すべきなのかもしれない。

 だが、じつはこうしたレーシングマシンも本当は完全なATにすればもっと速くなる。ドライバーからパドル操作も排除すれば、よりステアリング操作に集中でき速く走れる。エンジンのパワーバンドやトルク伝達効率も、コンピュータ制御したほうが圧倒的に有利になる。どのカテゴリーにおいてもそうなっていないのは、レギュレーションによりAT化が抑制されているからにほかならない。

 もしAT化が自由選択制となれば有力チームはいち早くAT化するだろう。だがプライベーターや弱小チームでは、対応が追いつかず不利になる。そこでイコールコンディション化を保つためにマニュアル操作をするよう定めているわけだ。

ポルシェは走行状況も考慮して変速を行う

 逆にいえば市販車レベルではレギュレーションがない。ATでもMTでもメーカーが思うように装備することができる。ではモータースポーツでも使いたいくらいに完成度の高いATはあるのだろうか? 現在市販されたもののなかかからピックアップすると、それはポルシェが装備するATのPDK(ポルシェドッペルクップリング)ということになる。いわゆるツインクラッチのトランスミッションで、Dレンジでは完全ATとして扱え、ステアリングパドルを使ってマニュアルシフトも行える。

 PDKが優れているのは、そのメカニズムもさることながら変速制御プログラミングに表われている。たとえばDレンジで走行していてもコーナーでGが高まると、ギヤポジションが固定され無闇に変速しない。これはRR(リヤエンジンリヤドライブ)で、リヤの慣性質量の大きさからコーナリング姿勢が不安定になりやすい911の経験則から活かされた制御。PDK以前のトルコンATであったティプトロニックの時代にも、すでに採用されていた制御だ。

 またアクセル操作に応じてギヤを1~2速シフトアップしたりシフトダウンしたりする「キックダウンスイッチ制御」が取り入れられていたり、ブレーキペダルの操作量と減速Gに応じてシフトダウンを機能させるなどドライバーの自由度が高い。ほかにも80km/h以上でクルージングしていると、自動的にクラッチを切りクルージングさせて燃費を向上させるコースティング制御、ゼロ発進加速で最高性能を引き出せるローンチコントロール機能も備える。

 PDKに準じるのはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)車で、国産モデルでは三菱ランサーエボリューションXが初採用。現状では日産GT-RやホンダNSX、ホンダ・フィット、ホンダ・ヴェゼルなどが搭載している。ただGT-RやNSXといえどもポルシェPDKほどの完成した制御は与えられておらず、制御プログラミングの特許もからんでPDKの優位性は当分代わらないだろう。

 またスーパーカーとして名高いランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテやメルセデス-AMGの各モデルに採用されているDCTやMCT(マルチクラッチテクノロジー)も高い完成度を誇っている。とくにレースモードでのプログラム制御はサーキットに特化され、マニュアルシフト操作より確実に速く走れるよう設定されている。

 多くの人はトルコン式ATを嫌うが、その理由はトルコンのスリップ感とそれに伴うエネルギーロスに起因しているのだろう。だが最新のトルコンには1速のスタート直後からオーバードライブまで全段に渡りロックアップクラッチを作動させ、直結感を保つものもある。その制御が荒くシフトショックが大きいものは避けたいが、今やMTにこだわらなくても走りで満足でき、あえて選択する価値のあるATが存在するということを知っておいてもらいたい。

中谷明彦

最終更新:5/23(木) 18:02
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